研究課題
特別研究員奨励費
国内で流行している主なフラビウイルスはJEVのみとされているが、近隣のアジア諸国ではウエストナイルウイルスやデングウイルスなど複数のフラビウイルスの流行が報告されている。昨今の環境および生態系の変化や国際化に伴いJEV以外のフラビウイルスが国内に侵入する可能性が考えられる。そこで、今年度は国内における日本脳炎ウイルスおよび他のフラピウイルスの動態を調査するために、抗原および抗体検出系の確立を試みた。また、採取した野生動物のサンプルを用いてフラピウイルスの遺伝子検出を行った。計18個の単クローナル抗体の作製に成功し、そのうち調べたすべてのフラビウイルス属のウイルスと交差反応性を示すもの(5個)、日本脳炎ウイルス血清群(1個)または日本脳炎ウイルス(2個}に対して特異的なものがあった。これらの特異性の異なる抗体を利用して、各種動物からの抗体およびウイルス検出系の確立を試みている。抗原検出系では現在2.75x10^6PFU/mlまで検出できる系が確立できたが、実用には感度の向上が必要であると考えている。抗体検出系は二次抗体を必要とせず、様々な動物種に適用できるブロッキングELISAの系の確立を目指しており、犬、イノシシでは有用であることが示された。また、2012年から2014年にかけて山口県下関市で捕獲されたイノシシの肝臓(48頭)、血清(51頭)、シカの血清(79頭)、2013年から2014年山口県周南市で採集されたダニ(3413匹、143プール)よりフラビウィルスの遺伝子検出を試みた。下関市のイノシシ2頭、シカ2頭、周南市のダニ1プール(20匹)からフラビウイルスが検出された。系統解析の結果、イノシシ1頭から検出されたのはダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)様ウイルスで、Langatvirus (91%)と最も相同性が高かった。イノシシ、シカ、ダニから検出された遺伝子はほぼ同一で既知のフラビウイルスと相同性が最大で73%であった。シカ1頭からは日本脳炎ウイルスの遺伝子が検出された。
(抄録なし)
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