研究概要 |
本研究課題の目的は、途上国における開発政策に対して社会ネットワークの情報をどのように開発政策に活かすことができるかを理論的・実証的に明らかにすることである。しかしながら、これらの分析をするためのより基礎的な計量経済学的フレームワークが存在していないため、本年度は計量経済学的フレームワークの開発に従事した。具体的には、下記二つの研究に従事した。 第一に、修士課程の時より進めてきた,多数のネットワークが観察される時のネットワーク形成モデルの相互安定均衡における構造推定に関する論文の発表、精査、投稿を行った。この研究は、相互安定均衡と呼ばれるネットワーク経済学の文脈では頻繁に使われる均衡概念のもとで効用関数のパラメータを推定する、初めてのフレームワークを与えた。 しかしながら多くの応用、特に私が応用先として考えている途上国のデータでは、多数のネットワークが観察されるケースは少なく、一つのネットワークしか観察されない場合の構造推定のフレームワークの開発も必要とされた。そのため、第二の研究として、ノースウェスタン大学の渡辺安虎助教授との共同研究として、ネットワークが一つしか観察されない時のネットワークモデルの相互安定均衡の構造推定に関する研究を進めた。 これらの研究は、これまで社会ネットワークの分析をするにあたって大きな障害となってきた計量経済学的フレームワークの非存在という問題に一定の解決方法を与えるものであり、本研究課題に対しても有意義なものであったと考えられる。
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