本研究は、翻訳制御による抑制振動子の構築、RNPモチーフの改変と得られた人工RNPモチーフによる翻訳制御システムの構築、新規RNPモチーフの探索という3つの研究テーマについて研究を行い、RNPの性質について解析を行うことを目的とした。そのうち最も研究を進めたのが2番目の研究テーマであり、その成果を論文として海外雑誌に公表することができた。その成果を述べる。kink-turn(K-turn)への結合力が弱いL7Ae変異体(L7KKとする)に対してSELEX法を行い取得したアプタマーについて、その結合力をまずEMSAで測定した。SELEX法では42クローンから38配列のアプタマーが得られており、そのうち29配列でA/G-AUGAという共通配列が見つかったが、その配列以外の部分は多種多様であったので、38配列全てについてL7KKとEMSAを行い、強く結合するアプタマー9種(D12、G2、G6、G10、H1、H2、H5、H8、H10とする)を特定した。その9種のアプタマーについてSPR法(表面プラズモン共鳴法)を行い、解析ソフトで解離定数を計算したところ、9種とも1nM前後という低い値であることが確認できた。L7KKは、K-turnの一つであるBoxC/Dと約130nMの解離定数で結合することがSPR法で確認できたことから、SELEX法によって目的通り、L7KKにより強く結合するRNAを選択できたことが示された。最終的にアプタマーの最小配列としてH5のK-turnを組み込んだ23塩基のRNA(H23)を作製し、SPR法でL7KKとの結合を測定したところ、約1nMの解離定数で結合することが確認できた。最後にL7KKとH23を使用してHeLa細胞内で機能する翻訳制御スイッチを作製し、期待通りに機能することを確認した。これらを通して遺伝子発現制御方法の種類を増やすことに貢献できた。
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