研究概要 |
本研究では, 生理学的知見を説明する顕著度マップの神経回路モデルの構築を行う. 具体的には, 視覚情報が統合され, 顕著度マップが存在することが強く示唆されている頭頂間溝外側皮質(Lateral Intra Parietal cortex, LIP)をターゲットとした顕著度マップの神経回路モデルが提案する. LIPネットワークモデル構築における過程において, 従来から考慮されているニューロン集団の平均的な発火回数(発火率)だけでなく, ニューロン間の相関, 特に2つのニューロン間だけでなく, 3つ以上のニューロン間の高次相関が及ぼす影響に注目が集まっている. 私は, この高次発火相関が脳内ネットワークに及ぼす影響を, 高次発火相関構造とネットワークにおける各ニューロン間の結合構造と対応させることで, その機能的な役割を解明し, LIPにとどまらず, 脳内の各部位において重要な役割を果たしていると考えた. そこで我々は, 昨年度に引き続き, 高次発火相関の生じるネットワークモデルの構築を行い, ネットワーク構造と高次発火相関構造間の関係を理論研究した. 具体的には, LIP野等では層を経由する過程でニューロン間の相互作用によって徐々に計算処理し機能を実現しているため, 私は入力層および出力層の2層のネットワークモデルを構築した. 昨年度は, このネットワークモデルにおいて, 最適方位が近いニューロン同士は強く結合させ, 直交しているニューロン同士は弱結合させる構造を取り入れた(Ko et al. 2011). この結果, スパイク発火の非線形作用によって生じた高次発火相関構造が優位に変化することがわかった. 本年度は, 昨年度の成果を深化させ理論解析したところ, ニューロン間の相互結合によるフィルタリング後のスパイクの3次統計量を生成する数理機構と, その3次統計量が外界の情報のキャリアになりうることがわかった. この理論結果から, 3次発火相関により, LIPのみならず脳内全体においてより高速にロバストな情報処理ができると期待される.
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