研究課題
特別研究員奨励費
本研究は炎症性腸疾患での血中亜鉛濃度低下の原因を明らかにすることによって、食事亜鉛を利用した腸炎緩和および予防へとつなげる研究基盤を確立することを目的とした。腸炎での血中亜鉛濃度の低下は、摂食量の低下に伴う亜鉛摂取量の減少や吸収不良が考えられるが、詳細な機構は不明であり、その他因子の影響も考えられる。亜鉛濃度の変動と大腸炎発症の関連も明らかにされていない。デキストラン硫酸ナトリウムによって実験的に大腸炎を誘導した動物モデルにおいて、体内での亜鉛レベルを制御している亜鉛輸送体(ZntおよびZipファミリー)発現に着目し、十二指腸、空腸、回腸、結腸といった消化管でのmRNA発現解析をした結果、一部の亜鉛輸送体が変動することが明らかになった。また、その他臓器における亜鉛含量が特徴的に変動していることが明らかになった。このことは腸疾患発症に伴い、臓器選択的に亜鉛要求性が変化した可能性を示唆しており、このことが腸疾患における血中亜鉛濃度の低下に寄与すると推察される。さらに、マクロファージ様細胞株を用いた実験において、細胞外部環境の亜鉛濃度がリポポリサッカライドへの刺激応答性および亜鉛輸送体発現に影響を及ぼすことが明らかとなった。この時、細胞内亜鉛レベルの変動も観察された。このことから、免疫細胞を取り巻く微小環境の亜鉛濃度は免疫細胞の機能性に重要な影響を与えていると考えられ、炎症性腸疾患での亜鉛の重要性が推察される。
2: おおむね順調に進展している
血液中の亜鉛濃度の変動を動物モデルでも再現した結果、腸管のみならず、その他臓器における亜鉛輸送体の重要性が示唆されるに至ったこと、ならびに免疫細胞での細胞内亜鉛レベルや局在の変化を見いだし、おおむね順調に進展した。
より詳細なメカニズムの検討を行うことで、さらに興味深い知見が得られることが予想される。そのため、学術振興会特別研究員終了後は、外部資金等の獲得が必要である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件)
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