研究課題
特別研究員奨励費
我々のグループでは、マイクロマシン技術の一つであるMEMS (Micro Electro Mechanical Systems)技術をX線望遠鏡の製作に応用することで、世界最軽量望遠鏡を実現し、最終的には次世代衛星への搭載を目指している。本望遠鏡は、薄い基板に世界最小101μmスケールで反射鏡を敷き詰めることで、原理的に従来の望遠鏡より一桁以上軽く(有効面積~1000cm^2/kg)、かつ同時に高い角度分解能(~15秒角)を実現することができる。X線望遠鏡は、光軸方向以外からの入射光子を結像するため、二枚の望遠鏡を組み合わせる必要があり、この組み合わせ精度が最終的な望遠鏡の性能(有効面積や角度分解能)に大きく寄与してくる。そこで本年度は、自身が設計の一部を担当し、業者様と協力することで、従来の組み合わせ装置に改良を施した。測定系の改善と併せ、反射面の突起構造を除去するような製作プロセスの改善、および二段目望遠鏡に重金属を成膜し、X線照射試験を行った。結果、FWHM<10分角、集光力として一桁以上の改善に成功した。また、本年度は自身が本望遠鏡の光線追跡シミュレーションの構築を行い、原理的に達成しうる性能を定量的に評価した(Mitsuishi et al.投稿中)。これは将来的には応答関数の構築につながり、目標とするサイエンスミッションの観測feasibilityを評価する上で必須となる。
2: おおむね順調に進展している
前年度と比較し、二段型望遠鏡の結像試験にて得られた、特に有効面積が飛躍的に向上したのは大きな成果である。さらに、今後のサイエンス要求への観測feasibilityを定量的に評価する上で必須である光線追跡シミュレーションが構築されたことも大きな進展だと考えられる。しかしながら、望遠鏡の主要性能である角度分解能にまだ課題が残るため(目標はHPD<1分角)、是非とも来年度は角度分解能の改善を目指したい。
今後は角度分解能の改善が最重要課題となるため、劣化の主要因と思われる、(1)反射面のラージスケール(>10μm)の粗さの低減、および(2)変形精度の向上を目指す。変形プロセスは、高温プレス加工を施すことで望遠鏡を球面変形し、角度分解能を向上させるためのプロセスである。しかしながら、曲率半径が設計値からずれたり、理想的な球面形状から歪んで変形された場合、角度分解能・有効面積の損失に寄与してしまう。そこで今後は、(1)を目指しドライエッチングプロセスの改善、および(2)の実現に向け、変形プロセス中の圧力および温度の条件出しを行っていく。
すべて 2014 2013 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 1件)
ApJ
巻: 783 ページ: 137-148
PASJ
巻: 65 号: 2 ページ: L31-L31
10.1088/2041-8205/742/2/l31