最尤法を用いた系統樹作成プログラムを用いて系統樹を作成し、galectin-13および-16の祖先型#40、galectin-14の祖先型#64、#40と#64の共通祖先#44、#44とgalectin-17の共通祖先であり、胎盤ガレクチンと外群の分岐点である#48、胎盤ガレクチンと高い配列相同性をもつgalectin-10の祖先型#45の5つの祖先型ガレクチンの塩基配列を推定した。#44と#48のアミノ酸配列は同一であった。リコンビナント祖先型ガレクチンは、Con IIタグ融合タンパク質発現系を適用して復元した。#45は大腸菌体内で分解されてしまったためにタンパク質を得ることができなかった。各祖先型ガレクチンについて、ヒトT細胞であるJurkat細胞とMOLT-4F細胞に対する毒性試験を行った。#44(48)と比較して#40は有意に毒性が強くなったが、#64は同等もしくは弱い毒性を示した。さらに、胎盤ガレクチン祖先型3種の糖鎖結合特異性をマイクロアレイによって詳細に調べた。胎盤型は魚類型に比べて糖タンパク質に対する結合が強く、また、結合できる糖タンパク質の種類が多かった。また、胎盤型は糖鎖末端の3位が硫酸、シアル酸、ガラクトースでそれぞれ修飾された糖鎖との結合力が高かった。胎盤型ガレクチンは免疫細胞または胎盤繊毛細胞への結合力を高めるため、細胞表面に発現する糖タンパク質に対して親和性を高めるように進化したと考えられた。さらに、胎盤型ガレクチンの祖先型の結合糖鎖と進化の関係を比較した結果、胎盤ガレクチンの最も祖先型に相当する#44(48)と比較して、galectin-13と-16の祖先型である#40の結合糖鎖特異性に大きな変化は見られなかったが、アレイに用いた糖鎖全体への結合力が1.5~2倍に増強していた。特に、胎盤を形成する繊毛細胞表面に発現するThomsen-Friedenreich抗原糖鎖に対し、結合力が増強していた。一方、galectin-14の祖先型#64は#44(48)に対して糖鎖全体に対して結合力の低下がみられた。しかしながら、ヘパリンに対する結合力が10倍以上増強し、ルイス抗原、アガラクト糖タンパク質など、一部の糖鎖に限って結合力が増強した。
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