研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、室温・空気中という穏和な環境下で自発的に解離・再結合を行う化合物(DABBF)を高分子に導入することで、無溶媒のバルク状態で自己修復可能な材料を開発し、高強度ナノファイバーとのコンポジットにより高強度化を、低表面自由エネルギーで材料表面に集まるフルオロアルキル基を用いて高修復性を達成することを目的としていた。前年度までに、バルク状態で修復可能な高分子材料の調製とその修復機構の詳細な検討に成功し、力学的刺激による可逆的な色調変化(メカノクロミズム)も見出した。これらの結果を踏まえ、今年度は「セルロースナノクリスタル(CNC)とのコンポジット化による高強度自己修復材料の調製」を試みた。所属研究室にCNCに関する知見がなかったが、日本学術振興会の日本-スイス若手研究者交流事業2014の援助により、CNCの権威である、スイスのProf. Christoph Wederの指導の元、研究する機会を頂き、CNCの調製と開発した自己修復材料とのコンポジット化を行った。得られた材料の強度はCNCの重量分率の増加に伴い増大し、最大で5倍以上に向上した。一方で、修復性に大きな低下は見られず、高強度自己修復材料の調製に成功した。また更なる高強度化のため、DABBFで修飾したCNCによるコンポジット材料も調製した。本年度で本事業は終了するが、今後は調製方法の最適化と力学物性や自己修復性のより詳細な解析を行う予定である。以上のように、今年度は「CNCとのコンポジット化による高強度自己修復材料の調製」に成功することができた。目標の一つであったフルオロアルキル基を用いた高修復性は未達成だが、もう一つの目標であるナノコンポジット化による高強度自己修復材料の創出は達成した。本研究課題では、この他に修復機構の詳細な検討やメカノクロミズムという興味深い現象も見出し、期待以上の成果を得ることができた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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