研究課題
特別研究員奨励費
DNA損傷を正確に修復する系が相同組換え(Homologous recombination ; HR)であり、HR関連遺伝子における変異は細胞のがん化を促進する原因となり得る。HR関連遺伝子の一種としてRecQヘリカーゼファミリーがあり、高等真核生物では5つのRecQが存在する。このうちの1つであるRECQL5/Recq15を欠損したノックアウトマウスが高発がん性を示すことから、がん抑制因子としてゲノムの安定性維持に寄与することが示唆されていた。また生化学的解析により、RecQL5が組換えの必須因子であるRad51と結合することが示されているものの、その詳細な分子機能は不明のままであった。本研究において、RecQL5のがん抑制因子としての機能とHR機構との関連を細胞レベルで検討し、組換えの制御や正確性にどのように寄与しているか解明することを目指した。平成24年度までに、RECQL5遺伝子破壊細胞はシスプラチンなどのDNA鎖間クロスリンク(interstrand crosslink ; ICL)損傷を誘導する薬剤に特異的な高感受性を示すこと、RecQL5が細胞内で機能するにはRad51との結合が重要であること、および遺伝学的解析によりRecQL5はHR因子BRCA2と同経路において機能する可能性を示すことができた。本年度は、「RecQL5が細胞内で組換えの正確性を制御するかどうか」を明らかにすることに焦点をおいた。実験系として用いたDT40細胞はニワトリBリンパ球由来細胞であり、抗体の多様性を生み出すために免疫グロブリンをコードする領域において恒常的な組換えが起こっている。この性質を利用してRECQL5遺伝子破壊細胞における組換えの正確性を評価したところ、薬剤無処理の条件下では野生株と比較して差は見られなかったものの、シスプラチン処理時には組換えで使用される鋳型の多様化が観察された。すなわち、組換え頻度の上昇だけでなく正確性の低下が引き起こされた。以上の結果は、RecQL5がICL損傷誘導性のHRにおいて、組換えの量と質を適切に制御し、効率の良いDNA修復を保証する機能を持つことを示している。この発見は、RecQL5が発がんを抑制するメカニズムを考察する上で重要な知見となり得る。研究成果は原著論文としてまとめ、学術雑誌にて発表した。
(抄録なし)
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Biochimica et Biophysica Acta-Molecular Cell Research
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