研究課題
特別研究員奨励費
体細胞にリプログラミングファクターを導入することで多能性幹細胞が誘導されることが示されているが、そのメカニズムについては未だよくわかっていないところが多い。本研究では、造血幹細胞で重要な働きを担いさらにそれぞれがDNA損傷応答とテロメア伸長に決定的な働きを持つ因子であるATMおよびTERTに着目し、多能性幹細胞の誘導および維持における両遺伝子の機能を解析することを目的とする。TERT遺伝子を欠損した体細胞からは多能性幹細胞の樹立効率が著しく低下した一方、レスキュー実験においてTERTはその酵素活性の有無に依らず誘導効率の改善に寄与することを明らかにした。TERT欠損細胞にウイルスベクターで正常なTERTまたは酵素活性を欠失したTERTを導入した細胞を用いてマイクロアレイ解析を行い、TERTの酵素活性に依らないターゲット遺伝子を抽出した。発現が低下する遺伝子の中にはEzh2やSuv39h2、HDAC9などのヘテロクロマチンに関する遺伝子が見出され、TERTはクロマチン再構成因子としてクロマチン構造に作用することでリプログラミングにおける遺伝子発現変化を促進している可能性が示唆された。リプログラミングファクターを導入した後の細胞においても同様に解析し、発現上昇する遺伝子の中にEsrrbやKlf17といったリプログラミングでの機能が既に報告されている遺伝子が含まれることを見出した。樹立されたTERT欠損iPS細胞では連続した継代において一時的な増殖障害およびテラトーマ形成不全を示した。各継代数の野生型ならびにTERT欠損iPS細胞についてマイクロアレイ解析を行った。GO解析により、「細胞接着」と「形態形成」に分類される遺伝子群が異常の現れる継代数40のTERT欠損iPS細胞で発現低下していることが明らかとなった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Journal of Biological Chemistry
巻: 289 号: 22 ページ: 15776-15787
10.1074/jbc.m113.536037