研究実績の概要 |
本研究課題は申請書で提案した,「超解像触覚の基盤技術」を1,2年度で確立し,最終的に,「触覚を用いた高精度の記号的情報伝達」という新たな分野を切り拓く内容であった. 開発したエッジ刺激法は局所的で鮮明,強烈な振動感覚を,数ミクロン程度の微小振幅で実現するものである.本手法により省パワーで小型の振動子,例えば剛性の高いピエゾ素子などを,触覚ディスプレイに使用し易くする.さらに,触覚ディスプレイ表面を凹凸の無い平面に製作することが可能であり,映像の投影や,デバイスの平面部分への埋め込み等,様々なアプリケーションに応用できる.今日まで「点」の組み合わせで形状を提示していたのに対し,エッジ刺激法は用いて2次元描画のプリミティブである「線」を皮膚に提示し,「線」の組み合わせで形状を作るというコンセプトである. 本手法を確立するために,1. 基礎的な特徴と2. メカニズムを調査した.1. では心理物理実験を用いて,感覚強度と触覚像の広がりをいくつかの機械的パラメータに対して調査した.結果から,振動子を隙間なく密に配置し,5-50 Hz 程度,振動面同士は逆位相の振動を用いた場合に最も振動知覚閾値が降下し,強烈な振動感が得られることが明らかとなった.また線を提示する際の,二線弁別域は4.2 mmであった.2. では有限要素変形解析を用いて,エッジ刺激条件下でのヒト皮膚内部のひずみの時空間的な分布を調査した.またヒト指型ひずみセンサを開発し,ひずみの広がりを調査した結果,単一の振動子を用いる刺激法と比較してひずみが振動面の境界に集中して発生しており,局所的な触覚像に寄与していることが分かった.得られた知見を用いて,3×3 の振動子アレイ型触覚ディスプレイを開発し,エッジ刺激による線形状の提示を行った.結果,95%の高い弁別率が得られ,エッジ刺激法を用いた線形状提示の有効性が明らかとなった.
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