研究概要 |
本研究の目的は、河川生態系における落葉分解速度と腐食食者の多様性との関係を検証するにあたり、腐食食者体内の化学量比の違いが影響しているかどうかを検証することである。 河川上流の生態系は陸上生態系から流入する落葉リターをベースとする腐食系の食物連鎖が発達している。そのため一時消費者として落葉リターを摂食する分解者が優占している。それら分解者による落葉リターの分解効率(摂食効率)は, 河川下流部および海洋への資源供給速度にも影響し, 生物の群集構造や景観構造を維持する上で非常に重要な生態系機能であると考えられている。 落葉リターのC/NおよびC/P比は樹種間で大きく異なることが知られているが、近年、分解者の体組織も同様にC/NおよびC/P比が分類群間で大きく異なることが分かってきた。つまり, 単位体積あたりの体を構成するために必要な栄養塩量が分解者分類群間で異なることが考えられる。そこで我々は, 体に多くの栄養塩を含む(C/NおよびC/P比が低い)腐食食者は栄養塩豊富な餌資源を選択的に摂食するのではないかと予測した。一方, 体内にあまり栄養塩を含まない(C/NおよびC/P比がより高い)腐食食者は, あまりえり好みをしないのではないかと考えた。これらのことから, 様々なC/NおよびC/P比の落葉リターが存在する環境では, 様々なC/NおよびC/P比を有する腐食食者が存在する方が, 落葉リターの分解効率が上昇するのではないかと予測した。 私は2012年度秋期に室内実験を行い, マイクロコズムに様々な組み合わせで落葉リターと腐食食者を投入し, 落葉リターの分解効率を検証した。その結果, ストイキオメトリックな多様性が高いほど分解効率が高くなるという予測を示唆する結果を得ることができた。本研究はアメリカ生態学会(査読付き)にて発表した。
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