研究課題/領域番号 |
12J07507
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
宗教学
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
阿部 善彦 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2014-03-31
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研究課題ステータス |
採択後辞退 (2013年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2013年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2012年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | キリスト教神秘思想 / ドイツ神秘思想 / エックハルト / 近世の霊性 / 一般民衆の宗教霊性 / デヴォチオ・モデルナ / フランドル神秘思想 / 神の友運動 |
研究概要 |
本研究では、在俗信徒・民衆の霊性に対するエックハルト及びドイツ神秘思想の影響関係を解明する。そのために、本年度は、昨年度の海外研究出張を通じて収集した、国内に資料が特に乏しい、中世後期―近世のキリスト教神秘思想(主にドイツ神秘思想と関係の深いフランドル神秘思想とデヴォチオ・モデルナ)と同時期の一般民衆の宗教霊性に関する研究資料・文献の精読と調査を集中的に行った。 こうした文献の調査を通じて、特に、ドイツ神秘思想におけるエックハルトの『教導講話』(1294年頃)が、フランドル神秘思想の中心的思想家であるリュースブルクのテキストと混合され、『12の徳について』という中世オランダ語のテキストとして成立し、さらにそれが、ドイツ神秘思想のヨハネス・タウラーのテキストとして『タウラーの霊的綱要』という題で再受容され、しかも、『タウラー著作集』のラテン語訳版の中に収録され印刷されることによって、ドイツ・フランドル地域のみならず、ヨーロッパ各地に流布し、受容され、そのラテン語版から、さらに、各地域で俗語訳され、それぞれの地域における神秘思想、霊性の中に受容された状況がはっきりしてきた(とりわけスペイン神秘主義やフランスの敬虔主義への影響が大きい)。こうしたテキスト受容史から、中世末から近世のキリスト教思想史・霊性史を解明するとしてドイツ神秘思想におけるこうした集中的な現地調査を通じて、中世後期―近世の神秘思想の展開(ドイツ神秘思想からフランドル神秘思想、デヴォチオ・モデルナに至る)について一定の展望と研究状況の知見を確保できた。これらの研究成果は、国際学会を含む学会発表で公表されるとともに、論文や翻訳を通じて公表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しく収集した研究文献・資料の調査によって、ドイツ神秘思想および、それを受容したフランドル神秘思想、さらに、デヴォチオ・モデルナの思想的展開と、同時期の一般民衆の霊性の状況にっいて多くの知見を得ることができた。特に、14-15世紀に数多く作成された霊的著作を編集・抜粋した諸写本をとりあげ、その成立状況から、その写本にかかわった人々の霊性・思想的傾向を分析することに、研究方法として、大きな可能性があることがわかってきた。これらの研究成果は学会発表、論文を通じて複数の機会に公表し、また、今後も公表の準備ができている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、本研究課題にとって重要なテキスト(哲学・神学・霊性的著作)の思想内容の解読を進める。それとともに、14-15世紀に量産された霊的・宗教的写本に収録されたテキストを精査し、そこから、同時期の霊性に対するドイツ神秘思想、フランドル神秘思想、デヴォチオ・モデルナの影響を分析する。その際、従来、自らテキストを著述することが少ないために独自の思想表現を見出す困難であった、女性たちの霊性についても、彼女たちが編集・編纂して作成した初写本が、研究資料として大きな意味を持ちうることが分かったので、これについては、特に、研究を進めることにしたい。そのため、本年度で終了することになった本研究課題を発展させた形で、継続し、14-15世紀の女性の霊性を、諸写本に収められた霊的テキスト(特にドイツ神秘思想に関する俗語のテキスト)の分析から女性たち(一般信徒および修道女たち)の霊性史的状況を解明する研究を推進したいと考えている。
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