研究課題
特別研究員奨励費
カドミウム(Cd)などの有害な重金属で汚染された土壌を植物で修復する技術、ファイトレメディエーション法の確立に向けて、イネからCd耐性機能を持つ遺伝子の探索を行った。イネの全長cDNAが導入されたシロイヌズナの種子プール(FOXハンティング)をCd含有培地でスクリーニングを行い、耐性を示したFOX26系統の所有する遺伝子のシークエンス解析をした。その結果、OsREX1-S遺伝子が見つかった。OsREX1-Sは、131アミノ酸からなるタンパク質であり、クラミドモナスのCrREX1-Sや分裂酵母やヒトのTFIIH転写複合体の10番目のサブユニットであるTFB5(=p8)と高い相同性を示した。このことからOsREX1-は、植物細胞の核への局在が予測したが、OsREX1-S-GFP融合タンパク質を用いた実験により核局在を実証した。FOX26で見られたCd耐性の形質が、OsREX1-S遺伝子に依ることを確認するためにアグロバクテリウム法によりOsREX1-S遺伝子過剰発現シロイヌナズナを作製した。独立した2系統両方も、Cd耐性を示した。従って、FOX26が示したCd耐性はOsREX1-S遺伝子に依ると結論した。これらの植物体は紫外線(UVB)耐性も示した。そこでこれら植物体にUVB照射後、DNA光回復酵素が機能しない赤色光条件下で生育させ、各植物体からゲノムDNAを調製し、シクロブタンピリミジン2量体(CPD)の量を、抗CPD抗体を用いたELISA法で検定した。その結果、OsREX1-S発現系統は野生株よりもCPDの量が有意に低下した。従って、OsREX1-S過剰発現株ではDNA除去修復活性が高まっていることが強く示唆された。次に、DNA鎖の切断や2本鎖架橋構造の誘導を引き起こす薬剤であるブレオマイシンやマイトマイシンCを野生株とOsREX1-S発現株に処理した。その結果、OsREX1-S過剰発現株は野生株に比べ、より耐性となることを確認した。以上の結果から、OsREX1-Sを高発現した植物は、宿主のTFIIH複合体を安定させ、DNA損傷修復能を高めると考察した。
(抄録なし)
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Planta
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Journal of Experimental Botany
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