研究課題/領域番号 |
12J07663
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
木質科学
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
楊 全嶺 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2012 – 2013
|
研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
|
配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2013年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2012年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
|
キーワード | 再生セルロースフィルム / LiOH/尿素 / ナノコンポジット / 疎水化メカニズム / AKD / アルカリ/尿素 / 酸素バリア性 / 疎水性 |
研究概要 |
アルカリ(水酸化リチウム)・尿素溶液から調製された再生セルロース(AUC)・サポナイト(SPN)のナノ複合フィルムは高い光透過率と柔軟性を示した。複合フィルム内ではサポナイトのペレットはインターカレートした層状構造を取る。セルロースII型結晶及びサポナイトの長軸はいずれもフィルムの表面に平行して配向した。サポナイトの分散性が良好で配向性が高かったため、セルロースフィルムに比べて複合フィルムはより良い機械強度、ヤング率、熱安定性及びガスバリア性を示した。破断仕事や破断伸び率においても、複合フィルムのほうがすぐれていた。更に、湿潤状態での引張により配向性が向上した複合フィルムを乾燥状態で引張試験に供したところ、引張強度とヤング率はそれぞれ241MPa、7.7 GPaに達した。以上により、AUC-SPNフィルムは包装材料に適した良好な物性を有することが分かった。 再生セルロースフィルムをカチオン性アルキルケテンダイマー(AKD)の水分散液に浸漬し疎水化させた。共有結合を作らなかったAKDをクロロホルム、熱湯、及びジオキサン・水混合液によって順次に抽出し、フィルム表面に残存したAKD関連物質について調べた。抽出後、フィルムに残存するAKDはほとんど検出されなかったが、水接触角は依然として高かった。一方、C6の水酸基のほとんどがカルボキシル基に変換されたTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN)で調製したフィルムに対し同様の処理を施したところ、抽出前後の水接触角には顕著な差があった。この結果により、抽出前のフィルムにおいて、AKDのほとんどは未反応なままで、物理的相互作用によってセルロースフィルムやTOCNフィルムに吸着していたが、抽出処理により完全に除去された。一方、AKD・セルロース界面に存在した微量のAKDは抽出処理によって除去されないβ-ケトエステルを形成したことが示唆された。このAKDの疎水化メカニズムの解明は製紙工業におけるサイジングを理解するための重要な知見となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究の目的」に従ってAUCと市販の合成ナノクレイであるSPNとの複合化を行い、透明性を損なうことなく、高強度、高ガスバリア性を有するナノコンポジットフィルムを調製した。AUC-SPNの複合フィルムに対し、結晶性、配向性を評価し、機械強度、熱膨張率、ガスバリア性を測定し、AUC-MTM(モンモリロナイト)複合フィルムとの比較を行った。更に、機械強度を向上させるため湿潤状態での引張により配向フィルムを調製した。 次に、AKDによるセルロースの疎水化のメカニズムを究明した。AKDにより疎水化されたAUCフィルム、(C6水酸基を持たない)TOCNフィルムに対し、抽出処理を行い、AKDの残存量と抽出前後の水接触角を比較した。AKD-AUCフィルムではAKDのほとんどは未反応だが、界面に存在する一部のAKDがセルロースとβ-ケトエステルを形成したことが示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
今までの研究結果を踏まえて、今後の課題として一番重要なのはセルロース系フィルムの高湿度条件下でのガスバリア性の向上である。その解決に向けて、疎水性高分子との複合化や、金属や疎水性高分子によるラミネニトなどを試みたい。
|