研究課題/領域番号 |
12J07890
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
物性Ⅱ(磁性・金属・低温)(実験)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
榮永 茉利 新潟大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2013
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研究課題ステータス |
採択後辞退 (2012年度)
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配分額 *注記 |
900千円 (直接経費: 900千円)
2012年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 圧力誘起超伝導 / 構造相転移 / 低温高圧下電気抵抗測定 / 放射光X線回折実験 / 三次元トポロジカル絶縁体 / テルル化ビスマス |
研究概要 |
Bi_2Te_3やSb_2Te_3は優れた熱電変換性能を示す物質として研究が行われている。高圧下物性については、1960年代にいくつかのグループによって、Bi_2Te_3の圧力誘起超伝導が報告された。しかし、実験の静水圧性や精度が不十分であったためか、ゼロ抵抗が観測されていなかった。また、物質の伝導に大きく寄与する構造については現在まで明らかになっていない。我々はこれまでに、Bi_2Te_3の圧力下の伝導と構造について調べ、Bi_2Te_3のゼロ抵抗を確認し、高圧II、III、IV相の存在を明らかにした。さらに、高圧IV相の構造はbcc格子からなる置換型合金構造で説明できることを明らかにした。また、近年、Bi_2Te_3やSb_2Te_3などは三次元トポロジカル絶縁体として注目されており、高圧下物性も大変興味深い。本研究の目的は、Bi_2Te_3をはじめとしたV-VI族半金属化合物の高圧下電子輸送特性の圧力変化を実験・理論的に調べ、圧力下におけるフェルミ面近傍の電子状態を明らかにして圧力誘起超伝導の機構を解明することである。そこで、採用第1年度(当該年度)では、次の3点を行った:1.10GPaの高圧下のホール効果測定装置の立上げ、2.非化学量論組成のBi_2Te_3および化学量論組成のSb_2Te_3の測定試料の作製、3.バンド計算に用いる構造パラメータを得るための、Bi_2Te_3の各高圧相の高圧下の構造決定および解析。 3点の研究計画については、それぞれ以下に示す成果を得た。1.一気圧下ホール効果測定システムを構築した。2.仕込み組成でTeが55-69at.%試料を作製した。65at.%試料は一気圧下でホール効果を測定した。また、65、69at.%試料の高圧下電気抵抗測定を行い、超伝導を確認した。65at.%試料はBi_2Te_3に比べて約2GPa低圧で超伝導を示すことを明らかにした。3.Bi_2Te_3について秩序構造を持つ高圧IV相を提案した。また、ごく最近、高圧II、III相は他研究グループにより提案された構造モデルで説明できることを確認した。本研究では各高圧相の構造モデルを用いて、X線回折パターンの解析を行い、各構造パラメータを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで明らかになっていなかったBi_2Te_3の高圧相について構造パラメータを得ることができた。特に、秩序構造を持つ高圧IV相の構造モデルを提案した。この構造モデルを用いれば、IV相の電子構造を理論的に予想することができる。他方、高圧下ホール効果測定のセットアップは構築中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は超伝導が比較的低い圧力で生じる非化学量論組成を中心に高圧下の電子輸送特性を明らかにしていく。 また、本研究ではBi_2Te_3の高圧下の構造と超伝導転移温度の圧力依存性を比較しているが、それぞれの結果は測定している温度領域が異なる。具体的に述べると、構造の結果については放射光X線回折実験を室温で行っている。 一方、超伝導転移温度はBi_2Te_3の転移温度領域である5K以下で測定されている。我々は、電気抵抗率の温度依存性が連続的な変化であることから、室温から5Kの温度範囲で構造相転移が起こっていないと考えている。しかし、実際に圧力誘起超伝導の観測されている圧力・温度領域で、$123がどのような構造を持つかは明らかになっていない.そのため、低温・高圧下でx線回折実験を行い、Bi_2Te_3の構造の温度・圧力相図を明らかにする必要がある。
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