研究課題/領域番号 |
12J07896
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
農業土木学・農村計画学
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
大平 充 東京農工大学, 農学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2013年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2012年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 群集集合 / 水田水域 / 魚類 / 水生無脊椎動物 / 種多様性 / 保全 / 農業水路 / 接続性 / 階層スケール |
研究概要 |
農業水路における魚類群集の形成について、水深や流速といった水理的な環境の多様さが主に多様な種の共存に効果があること、そして種間の共存パターンとして決定論的なパターンが観察されることを示した。河川周辺に形成される氾濫原などの生息場における、移入可能性の高さを示す河川との近接性が種多様性を左右すること、また確率論的な種間の共存パターンが観察されるというものとは異なる傾向が示された。これは、確率論的な水位変動により形成される氾濫原とは異なり、灌漑による安定した水の供給が魚類群集の形成を特徴付けているためであると考えられた。このことから、河川からの移入に対して、水田水域内の個体群成長や種間での共存を担保することが、種多様性の形成の保全に高い重要性を持つことが示唆された。 水生無脊椎動物群集については、それは標高や河川からの距離といった空間的な条件と高い相関があることを明らかにした。このことは、近接する河川の上流―下流といった河川流域における種組成の差異や、河川からの移入機会の差異により種組成が決定されることを示唆している。特に、成虫期の飛翔能力が弱い種群においてこの傾向が顕著であったことからも、河川からの移入が種組成および種多様性の形成において重要であることが示唆された。したがって、その種多様性の保全には、河川からの移入を考慮したゾーニングが保全・復元の効果を左右することが示唆された。 上記のように、支配的な群集形成プロセスについて示すことができ、優先的に用いるべき保全手法について提示することができた。そして、本研究は圃場整備等が行われていない伝統的な灌漑システムにおける結果であることから、水田水域の原初的環境である氾濫原研究との比較を通して、水田水域がこれまでどのように種の多様性を形成してきたかについてアプローチすることができたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国際的な学術雑誌に対しての論文投稿にあたって、水田水域という特殊な環境における研究の意義や、比較事例が少ないなかでの結果の妥当性や新規性の判断などにおいて、厳しい評価を受けることがあり、論文掲載について予定通りの進捗が得られなかった。しかし、世界的な集約的農業の進行下における生物多様性保全・生態系サービス管理のなかで研究を位置付け、また水田水域の原初的環境である氾濫原における研究との比較による考察を行うなどして、その課題は解決しつつあると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在最も課題となっている圃場整備後の近代的な灌漑システムを持つ水田水域における生息場の保全・復元のためには、本研究により得られた結果の検証やその変異性についてさらに検討する必要がある。これを行うことにより、氾濫原―伝統的灌漑システムを持つ水田水域(圃場整備以前〉―近代的灌漑システムを持つ水田水域(圃場整備後)という変化による生物群集の形成プロセスの変化とそれに対応した保全・復元手法を提示できると考えられる。また、水田水域の変化による生物群集の形成機構の変化とそれに基づく効果的な保全方策の検討のための統合的な生息場管理に対して、知見の多い畑作等の農業景観の研究を整理し、水田景観への適用性と特有性から研究の課題に再整理し、これについての総説の執筆および投稿予定としている。
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