研究課題
特別研究員奨励費
遠方天体の空間分布を利用して宇宙の大域トポロジーを決定するための基礎研究を行っている。前年度までに、現在標準とされている平坦な一様等方宇宙のトポロジー決定に向けた独自の統計手法を確立していた (Fujii & Yoshii 2013) が、本年度では次世代の精密宇宙論時代を見据え、より一般的な宇宙モデルへと考察を広げた。具体的には、正曲率宇宙のトポロジー決定にまつわる種々の不定性を数値シミュレーションを通して調べ、全エネルギーに対する密度パラメータが持つ不定性が最も重要であることを明らかにした。パラメータ空間を細かくサーベイする必要があり、いかに計算を短縮するかが今後の課題である。一方で、観測から天体の距離を決める際には時空計量を仮定する必要があるが、これまでの研究ではいずれも大スケールでの一様等方性(宇宙原理)を前提としていた。そのため、宇宙原理を観測的に検証しておくことが重要であると考え、最近の観測によって存在が示唆されている巨大空洞領域 (e.g., Keenan et al. 2013; Szapudi et al. 2015) が、宇宙原理と矛盾しないかを調べた。公開されているN体シミュレーション (Horizon Run 2) の結果を利用し、予備的ではあるが、標準的な宇宙モデルと銀河バイアスを仮定した場合、上記のような空洞領域が観測される確率は1%未満であることを示した。さらに、時空計量の観測的な測定方法の一つである銀河計数法にも注目しており、SDSS によって取得された近傍銀河分布を用いた密度パラメータの測定を試みている。銀河進化などによる不定性をより詳細に調べる必要があるが、その他の観測と矛盾しない結果を得ている。また、非一様な Stephani 時空にもとづく宇宙論モデルの研究にも着手しており、本モデルにおける銀河計数を初めて定式化した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Astrophysical Journal
巻: 773巻 号: 2 ページ: 152-159
10.1088/0004-637x/773/2/152