研究課題
特別研究員奨励費
ヒトが、食事から摂取するビタミンKの90%以上はphylloquinone (PK)であり、体内の組織中に存在するビタミンKの大部分はmenaquinone-4 (MK-4)である。これまでに、ヒトやマウスの脳に、MK-4がビタミンK標的組織である肝臓や骨よりも高濃度に存在すること、投与したビタミンKが脳に移行しMK-4が生合成されることを報告している。また最近、我々はこの生合成を担う酵素がUbiA prenyltransferase domain containing 1 (UBIAD1)であることを世界に先駆けて報告した。しかし、脳内にMK-4が高濃度に存在する理由は明らかでなく、脳におけるビタミンKの生理作用については十分に解析されていない。そこで、申請者は脳神経変性疾患と脳におけるMK-4生合成の意義を解明するため以下の検討を行った。これまでに、UBIAD1遺伝子のターゲティングベクターを含むES細胞株の樹立し、UBIAD1遺伝子のExon-1の下流にネオマイシン耐性遺伝子を組み込み2個のloxPで挟んだターゲティングベクターを含むES細胞株を用いてUBIAD1^<flox/flox>マウスを作出した。さらに、作出したUBIAD1^<flox/flox>マウスに、Creマウスを交配させ、全身的にUBIAD1発現が欠失したUBIAD1^<-/->マウスを作出した。平成25年度は、作出したUBIAD1^<-/->マウス、表現型の解析を行った結果、UBIAD1^<-/->マウスが胎生早期において致死となることが明らかになった。全身性UBIAD1^<-/->マウスの解析が困難なことから、次にUBIAD^<+/->マウスの表現型の解析を行った。その結果、UBIAD1^<+/->マウスは野生型と25週齢まで体重に差は認められず、UBIAD1遺伝子およびタンパク質の発現量が30%以上有意に低下した。また、UBIAD1^<+/->マウスの大脳を含め23組織中のMK-4量は、UBIAD1タンパク質発現量と同様に低下していた。さらに、UBIAD1^<+/->マウスの大脳から初代培養した神経幹細胞は、野生型と比較してニューロンへの分化が亢進する傾向が認められた。このように、本年度はビタミンKの脳における生理作用をUbiad1遺伝子欠損動物および細胞を用いて解析を行った。
(抄録なし)
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