研究課題/領域番号 |
12J08584
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
文化人類学・民俗学
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
岡部 真由美 国立民族学博物館, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2014-03-31
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研究課題ステータス |
採択後辞退 (2013年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2013年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2012年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | タイ / 仏教僧 / 開発 / ネットワーク / コミュニティ / カリスマ |
研究概要 |
2年目にあたる本年度は、ローカルな地域社会における僧侶個人の実践が、仏教僧ネットワークという新たなコミュニティの内部で形成されつつある共同性といかなる関係をもっているのかについて詳細な民族誌的なデータを収集することを課題とした。これは、近代化・グローバル化が進行する現代世界におけるコミュニティの動的な編成過程を解明するという本研究の目的に対して、タイにおける仏教僧ネットワークに関する基礎的資料の収集に重点を置いた昨年度の研究成果を踏まえた課題である。 (1)現地調査は、「北タイ・コミュニティ開発僧ネットワーク」に参加する僧侶たちのなかで、タイ北部チェンマイ県ウィアンヘ一ン郡に新たな宗教施設を創設した特定の僧侶個人に着目し、①2013年11月の10日間、②2014年2月~3月の21日間の計2回実施した。①ではカティナ儀礼(ヂュンラ・カティン)、②ではローカルな社会状況に特に留意し、聞き取りと参与観察による調査を実施した。調査から明らかになったことは、僧侶個人の実践は、第一に、仏教僧ネットワークをとおして他の僧侶やNGO関係者と交換・共有することで得られた知識や経験が断片的に用いられていること、また第二に、外部社会のなかでもとりわけ、首都圏女性を中心にローカルな地域社会を越えて広がる信奉者ネットワークの影響を強く受けていること、である。(2)文献調査では、現地調査の際に収集した、ヂュンラ・カティン儀礼に関する現地語資料(図書、論文、新聞記事)を読解し、現代タイ社会におけるこの儀礼の現状が把握できた。また(3)研究成果は、昨年度までの調査研究結果を日本文化人類学会および国立民族学博物館共同研究会で口頭発表した。本年度の調査研究結果を、日本文化人類学会で口頭発表し、『国立民族学博物館研究報告』へ論文投稿するための準備をすすめている。さらに、博士論文をベースに、その後の調査研究成果をとりまとめた単著を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、タイ北部における現地調査をとおして、仏教僧ネットワークに関わってきた特定の僧侶個人に焦点を当てた調査データを収集することができた。特に、仏教僧ネットワーク以外に、僧侶個人の実践に大きく影響を与える外部の力として、儀礼をとおして地域を越えて広がる信奉者と僧侶とのネットワークについて綿密なデータを収集することができたことは、期待以上の成果を収めることができたといえる。また、国内の学会と研究会における口頭発表の機会や、タイ・チェンマイ大学を中心とする現地研究者たちとの意見交換の機会をとおして、研究成果に対する新たな知見を得られたことは、今後の研究の発展にとってきわめて有意義であった。
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今後の研究の推進方策 |
採用2年目で特別研究員を辞退することになったため、本研究は、3年間を予定していた研究期間を2年間で終了せざるを得なくなった。したがって、これまで2年間に蓄積してきたタイ北部における仏教僧ネットワークに関する民族誌的データを用いて、現代世界におけるコミュニティ編成の過程を考察する人類学の理論的研究は、今後の課題として残されたが、2年間の調査研究をとおして得られた新たな知見を踏まえながら、継続して取り組むことが期待される。
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