研究課題
特別研究員奨励費
造血幹細胞は酸化ストレス(reactive oxygen species; ROS)に脆弱であり、ROS産生量の亢進によって幹細胞性を喪失して枯渇する。これまでの結果から、“ミトコンドリア熱ショックタンパク質”Mortalinが、ROS制御を介して造血幹細胞の未分化性を保つ重要な分子であることが示唆されている。造血幹細胞(CD34-LSK細胞(HSC))中のMortalinの発現量を免疫組織化学的に評価したところ、造血幹細胞集団の中でも、Mortalin発現量には細胞ごとに強弱のばらつきが認められた。この結果を受け、Qdotナノクリスタルで標識した抗Mortalin抗体を用いた分画を行ったところ、造血幹細胞集団中のMortalin発現量の強い画分と弱い画分が分取できることがウエスタンブロット法により確認できた。これらそれぞれの画分について長期骨髄再構築能を評価したところ、Mortalin高発現画分は非常に高い再構築能を有していた一方、Mortalin低発現画分はほぼ生着を認めず、幹細胞性を喪失していた。さらに、Mortalinに結合する抗酸化因子DJ-1に着目し、造血幹細胞におけるMortalinとDJ-1の結合を免疫沈降法と免疫組織化学法によって明らかにした。DJ-1 KOマウスでは造血幹細胞数が大幅に減少しており、幹細胞内のROS蓄積量が大幅に高まっていた。さらに、造血幹細胞においてMortalinが幹細胞保護による未分化性維持の機能を発揮するには、DJ-1が必須であることを証明した。これにより、ROS産生抑制による造血幹細胞の未分化性維持機構として、Mortalin-DJ-1経路が必須であることを初めて明らかにした。本研究成果はBlood誌に掲載され、幹細胞システムの理解のみならず、癌幹細胞の性質解明における貴重な知見をもたらした。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cell
巻: 159 号: 3 ページ: 584-596
10.1016/j.cell.2014.09.025
Blood
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