研究課題
特別研究員奨励費
平成25年度は、研究上の主要テキストである12世紀アルメニア教会の神学者・総主教ネルセス・シュノルハリの書簡の読解及び分析を中心に、彼が教会合同に向けて行ったビザンツ帝国との交渉、そしてそれに伴い展開された彼自身の神学的思想―とりわけ、正教会との間の議論で争点となるキリストの神性と人性の合一について―の内容はかなりの程度明らかになった。日本においては未だ非カルケドン派のキリスト論に関する詳細な研究が存在しないため、ネルセス・シュノルハリの著作を通じてアルメニア教会のキリスト論の特色を論じることができたことは、大きな前進であるといえる。また、ネルセス・シュノルハリは、アナトリア半島東南部、エデッサに近いフロムクラを拠点として活動し、ビザンツ皇帝やコンスタンティノープル総主教だけでなく、当時十字軍諸侯国を通じて東地中海に影響力を拡大していたローマ・カトリックと友好関係構築をめざした人物としてアルメニア教会史にとどまらずビザンツ史や中世ヨーロッパ史においても注目される人物である。しかし、彼に関する史料、特に古典アルメニア語で書かれたものに関しては、写本など未刊行の文献がほとんどであるため、平成25年9月にアルメニアのエレヴァンにあるメスロプ=マシュトツ記念国立文書館においてネルセス・シュノルハリの書簡及び彼に関連する写本の閲覧・収集を行った。その結果、ネルセス・シュノルハリの書簡集として出版されたテキスト(1871年エルサレム刊)は、その成立過程や基となった写本の系統などに不明な点が多いことが判明したため、写本資料に基づいたより綿密な史料批判が今後の課題となった。ネルセス・シュノルハリについて写本まで遡った研究は現時点で初めての試みであり、将来これが達成されれば、アルメニア教会史やキリスト教論争史、あるいは中世ヨーロッパ史において重要な足跡を残すことになる。
(抄録なし)
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Армяне юга России : история, кулътура, общее 6удущее
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