研究課題
特別研究員奨励費
顕生代の地球表層環境変動に対する底生生物の応答様式を評価するために,平成24年度・25年度に引き続きPhymatodermaという生痕化石を対象として研究を行った.これまでと同様,底生生物の餌となる植物プランクトンの多様化が海洋底生生物にどのような影響を与えたのか,という課題に着目した.Phymatodermaは海洋無脊椎動物の糞粒で構成される生痕化石であるため,上述の課題解明のために最適な研究材料である.平成26年度は,三浦半島に分布する新生代深海堆積物(葉山層群,三崎層)で新たに野外調査を行い,Phymatodermaの標本を入手した.特に三崎層での調査の結果,Phymatoderma形成生物を特定する上で重要な証拠を発見した.昨年度までに既に採取していたPhymatodermaの標本も合わせて,平成26年度に調査した標本のサイズ分布の計測と糞粒中の微化石の観察を行った.三崎層での調査の結果,放射状の独特な構造が発見された.この構造は,ユムシという動物が海底堆積物を摂食した際に形成される摂食痕と非常に類似している.このことから,少なくとも三崎層のPhymatodermaについては,深海ユムシが排泄した糞粒である,と結論づけた.サイズについての結果は,昨年度までの結果を補強するものとなった.つまり,Phymatodermaのサイズはペルム紀~第四紀にかけて増大していることがわかった.また,糞粒中の微化石観察の結果,珪藻・浮遊性有孔虫・不定形の有機物などが観察された.3年間の研究成果を統合すると,Phymatodermaサイズの大型化は,中生代に起きた植物プランクトンの多様化に伴って底生生物の利用可能な餌資源が増大した結果であると解釈される.糞粒中に見られる微化石が中生代と新生代で異なり,それぞれの時代に卓越していたプランクトン群集であることも,この解釈を支持する.
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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