研究概要 |
本研究の目的は, 迅速・簡便・安全かつ定量的な関節角度の計測評価システムの開発と, これを用いてヒトの動作を客観的に評価することである。具体的には, 前年度までに開発した, 曲げ変形が加わると出力電圧を生じる柔軟なフィルム上の高分子センサ(柔軟ポリマーセンサ)を用いて, 関節の屈曲・伸展運動を定量的に計測する。 本年度は, 開発した柔軟ポリマーセンサを用いて手指の関節角度を計測するためのセンサシステムを構築し, 手指の屈曲・進展運動に伴う関節角度の変化を計測した。前年度までの研究により, 柔軟ポリマーセンサに加えられた曲げ変形の平均曲率とセンサ出力が線形関係にあることがわかっているため, まず, 手指の関節角度と関節甲部の皮膚表面の平均曲率の関係を明らかにし, 関節甲部にセンサを貼り付けた際に得られるセンサ出力から関節角度を推定する計算式を導出した。また, 実際にセンサを手指関節に設置して, 屈曲・伸展運動を行った際のセンサ出力を計測し, 導出した計算式から関節角度を推定した。 これに対して, 赤外線カメラを用いた三次元動作計測システム(VICON)を用いて手指関節角度を計測し, 推定した関節角度と比較した結果, 両者がほとんど一致することを明らかにした。このことから, 本研究で開発したセンサシステムが, 手指関節角度の計測に有効であることを示した。これらの成果は本システムが, 手指のような小さく可動域の大きい対象の計測を簡便に行うことができることを示唆したものであり, 医工学および医療福祉工学の発展に大きく寄与するものである。
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