研究概要 |
「らせん分子」の化学へ「ロタキサン」の化学を融合させ、キラルならせんがオリゴロタキサン構造で固定化されたエチニルピリジン会合体の構築を目指した。非解離性のロタキサン構造を用いることにより、キラル源である糖分子を除去した後も引き続いてらせんのキラリティーを保持できると考えた。この時形成した、糖のキラリティーを記憶したらせん分子は、糖鎖合成の際の位置選択的な糖連結反応の分子鋳型、人工酵素へと応用が可能である。 2,6-ジホルミルピリジン部位を側鎖に有するエチニルピリジン7量体(7-mer)の合成を行った。合成した7-merについて、高次構造の評価を円二色性(CD)スペクトル、紫外可視吸収(UV/Vis)スペクトル、マススペクトルを用いて行った。7-merと糖との会合体へ、ジアミノエーテルおよびビスアンモニウムカチオンを加えたところ、CDスペクトル上では糖とオリゴマーに由来するCDの増強が観測され、UV/Visスペクトル上ではロタキサン形成に由来する新たな吸収帯が観測された。ジホルミルピリジン部位とジアミノエーテルより形成した大環状イミンと、ビスアンモニウムカチオンとがロタキサン構造を形成した事を示唆する。参照実験として、ジアミノエーテルのみ、ビスアンモニウムカチオンのみを7-merと糖との会合体へ加えた場合では、そのような変化は現れなかった。また、ジアミノエーテルおよびビスアンモニウムカチオンの両方を加えた時、7-merの側鎖においてロタキサン構造が形成した事を示す分子イオンピークがマススペクトル上で観測された。これらの結果より、7-merの側鎖のジホルミルピリジン部位がジアミノエーテルおよびビスアンモニウムカチオンとロタキサン構造を形成し、このロタキサン構造がエチニルピリジンのキラルならせん構造を安定化する事が分かった。
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