研究実績の概要 |
平成25年度は、関数形に仮定を置かない地価を用いたリスク認識評価として「希少激甚リスクの情報更新が地価に与える影響」を南海トラフ巨大地震に関する被害想定報告書を用いて検証し、地価が変化したことを観察したが、立地選択における経済理論の下でどのように位置づけられるのかを明らかにできていなかった。したがって平成26年度は、関数形に関する仮定を置いたもとで被害想定報告書の地価に与えた効果をDD法を用いた回帰で明らかにすることを主眼に研究を行った。 期待効用理論とChichilnisky (2009)の理論それぞれで、希少激甚リスクの下での居住地選択に関する意思決定の定式化を行い、それをもとに2012年に政府のワーキンググループが1000年に一度それよりも低い確率でほとんど起こらないと考えられる南海トラフ巨大地震に関する被害想定報告書を発表したことの情報効果を部分線形な関数形のDD法によって推定した。この報告書は日本の太平洋側地域に関して、以前の想定ではその確率的希少性から無視されてきた規模の地震とそれに伴う津波を対象としており、本研究では発生確率が十分小さい災害とみなした。この報告書が地価関数に与えた影響は部分線形な関数形のDD法によって統計的に有意であることが認められた。これは、本年度新たに行った定式化の下では、とくにChichilnisky (2009)の理論での、希少激甚リスクの下での居住地選択に関する意思決定に対する予測を支持するもので、経済予測における希少リスクの重要性を示唆している。さらに、部分線形なDD法によって得られた結果は平成25年度の方法による推定結果とも整合的であった。 参考文献 Chichilnisky, G. (2009). The topology of fear. Journal of Mathematical Economics, 45, 807-816.
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