当初の研究課題名の方針からは若干の変更があったものの、前年度に引き続き、繊毛虫テトラヒメナでの組換え体ダイニンの発現を行い、その分子構築について調べた。 外腕ダイニン複合体の軽鎖LC1にHis-tagを導入し、Ni-NTAナノ金粒子標識をして電子顕微鏡観察することで、軽鎖LC1の局在がダイニンのストーク先端であることが分かった。この結果をさらに単粒子解析・生化学的実験を用いて追及した。 テトラヒメナのダイニン頭部断片の電顕像を用いて単粒子解析した結果、ダイニンストーク先端の微小管結合領域(MTBD)付近にLC1であると考えられれる構造体が付随していることが分かった。また、大腸菌で発現したストーク領域の断片とLC1を用いてプルダウンアッセイを行い、生化学的にも両者の結合を示した。キメラストークコンストラクトを用いて結合領域のマッピングを行うことで、MTBD領域のみでLC1結合に十分であることが明らかとなった。さらに、微小管共沈実験によって、LC1が結合することでダイニンストークの微小管への結合能が下がることを明らかとした。 先行研究で軽鎖LC1はダイニンのAAA+リングに結合しており、AAA+リングを軸糸ダブレット微小管A小管にアンカーさせる役割を担っていると考えられていたが、本研究結果から、LC1が外腕ダイニンの軸糸ダブレット微小管B小管へのアフィニティーを調節することでその活性を制御しているという新たなモデルを構築するに至った。
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