研究課題
特別研究員奨励費
病原真菌Candida glabrataが宿主体内で感染、特に全身性の血流感染を引き起こしている状態では、トランスフェリンなどの血中鉄キレートタンパク質の働きによって、菌が利用できる遊離鉄の濃度は極めて低く保たれている。鉄は菌の増殖に必須であることから、C.glabrataが宿主体内で増殖し、病原性を発揮するためには、宿主体内における鉄欠乏環境に適応することが重要であると考えられる。宿主体内において活性化されるC.glabrataの鉄欠乏応答を同定し、病原性への関与を明らかにすることを本研究の目的とした。当該年度においては、C.glabrataと遺伝的に非常に近縁な非病原真菌Saccharomyces cerevisiaeとC.glabrataで、鉄欠乏条件における遺伝子発現プロファイルの比較を行った。細胞外ステロール取り込みおよびマイトファジーに関与する遺伝子の発現量がC.glabrataでのみ特徴的に増加しており、このような遺伝子の関与する応答が宿主体内における鉄欠乏環境適応および病原性に重要な役割を果たしていると推測された。それらの遺伝子の破壊株をC.glabrata株を親株に網羅的に作製した結果、細胞外ステロール取り込みの活性化とマイトファジーの活性化に必要な遺伝子をそれぞれ1遺伝子ずつ明らかにした。また、これら遺伝子破壊株のマウスに対する病原性は野生株と比べ、共に大きく低下しており、このような鉄欠乏応答遺伝子の関わる事象が病原性に関与していることが示唆された。当該年度において明らかにされた、C.glabrataの鉄欠乏応答と病原性との関連はこれまでに報告されておらず、真菌症の治療方針や新規抗真菌薬開発に役立つことが期待される。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Journal of Infection and Chemotherapy
巻: 19 号: 1 ページ: 138-143
10.1007/s10156-012-0531-3
FEMS Yeast Research
巻: (掲載決定) 号: 4 ページ: 411-421
10.1111/1567-1364.12043
Molecular Microbiology
巻: (掲載決定)