研究概要 |
地球集積時、月を形成した巨大衝突によりマントルとコアは高圧高温環境下にて化学平衡に達していたことが示唆されており、地球のマントルを構成するケイ酸塩とコアを構成する金属鉄合金について、その液体間化学反応を高圧高温環境下で実験的に調べることは地球の形成と進化の過程を知る上で非常に重要である。しかしながら、初期地球環境を模す超高温高圧下での液相間化学反応実験は技術的に困難であり、これまで主にマルチアンビル高圧発生装置による比較的低圧低温の実験データを外挿することによって議論が行われてきた。本研究では、初期地球においてコア-マントルの化学反応が起こりうる全温度圧力を発生可能なレーザー加熱式ダイアモンドアンビルセルを用い、温度圧力外挿無しで上記の議論を可能にすることを目指している。 本年度はレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS)による微量元素の分配実験を約40 GPa, 4000Kまでの温度圧力範囲にて行った。初期地球温度等、地球熱史にとって非常に重要であるU, Th、初期地球における化学分化のトレーサーとして重要な消滅核種を同位体に持つSm/Ndに焦点をあて実験を行った。その結果、U, Thの地球コアへの分配は地球熱史にほとんど影響を与えないこと、コアはNd, Smを分別させず、分化した化学的リザーバーの存在可能性は地球マントル深部に限られることが明らかになった。 さらに、当該研究を通して培われた高圧下での融解実験技術と放射光X線CT撮像技術を新しく組み合わせ、マントルの代表的な組成であるパイロライトについて、全マントルをカバーする圧力にてソリダス温度を決定することに成功した。 本課題研究成果は多数の国内及び国際学会にて発表を行った他、1本は論文としてScience誌にて出版された。またその他国際誌にも投稿・査読中である。
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