研究課題/領域番号 |
12J09604
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
有機化学
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
桑原 拓也 埼玉大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2013年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2012年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 芳香族性 / 重いメタロセン / トリプルデッカー錯体 / サンドイッチ錯体 / メタラサイクル / スタンノール / スタンニレン |
研究概要 |
本年度では、スタンノールをη^5配位子とした、アニオン性ルテノセンとハロゲン化物の反応を行った。その結果、スズ上にシリル基、アルキル基及び塩素を導入することに成功した。これまで、高周期14族元素メタロールもシクロペンタジエニル配位子と同様に、遷移金属に対してη^5配位子として機能するものと考えられていたが、本研究により、その配位様式は高周期豆4族元素上の置換基に大きく依存することが明らかになった。シリル置換スタンノール錯体では、スタンノール環はほぼ平面であり、ルテニウムにη^5で配位するのに対し、スズ上に塩素が導入された錯体では、スタンノール環は大きく折れ曲がり、スズ-ルテニウム相互作用がほとんどないことが明らかになった。このとき、スタンノールはルテニウムへη^4で配位しているものと考えられる。アルキル置換体は、上記二種類の中間の電子状態を有していることがわかった。 ケイ素置換ジリチオスタンノールとCp_2HfCl_2の反応も検討した。この反応ではSn-Hf間に二重結合を有するスタンニレン-ハフノセン錯体が形成されると期待できる。しかし、実際に単離された生成物は、特異な構造をもつスタンニレンであった。この化合物の^<119>SnNMRシグナルは-1000ppm付近という極めて高磁場領域に観測された。このことは、この生成物が中性のスタンニレンではなく、ジカチオン性のスタンニレンであることを示唆している。実際、理論計算からもスズの電荷は大きく正に偏っていることが示された。また、この反応を低温下^<119>SnNMRでモニタリングすると、-30℃付近で980ppm付近にブロードなシグナルが観測された。しかし、溶液を室温まで昇温すると、そのシグナルは消失し、約-1000ppmにシグナルが現れた。さらに、スタンニレン-ハフニウム錯体と、今回生成したスタンニレンジカチオンのエネルギー差は-50kcal/molと算出された。以上のことから、スタンニレンジカチオンはスタンニレン-ハフニウム錯体の異性化により生成したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度はアニオン性スタンノール錯体にハロゲン化物を作用させることで、初めてのスタンノールモノアニオン錯体の合成に成功し、スズ上の置換基がスタンノールの配位様式に大きな変化をもたらすことを見いだした。また、ジリチオスタンノールとハフニウム試薬の反応では、予想外ながら、特異な構造を有するスタンニレンを得た。以上の成果は、期待していたものとは方向性が若干違うものの、当初の計画以上である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、アニオン性サンドイッチ錯体と遷移金属ハロゲン化物の反応はほとんど検討するには至らなかった。この反応により、スタンノールの上下で異なる遷移金属がη^5で配位を受けた、ヘテロバイメタリックトリプルデッカー錯体が合成可能となると考えられる。また、導入した金属の種類に応じて、触媒能や物性等、スタンノールジアニオンを配位子としたことによって生じる特異な性質の発見が期待される。
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