研究概要 |
前年度の報告で, 直径10nmの金ナノ粒子にジスルフィド基を有するビス{オリゴ(エチニルヘリセン6量体)}を作用させることで, 金ナノ粒子表面に二重ラセン単分子膜が形成されることがわかっていた. また, この金ナノ粒子をテトラヒドロフラン-トルエン(1:1)混合溶媒中加熱冷却を行うことで, 金ナノ粒子上で可逆的に二重ラセン-ランダムコイル間で構造変化した. 今年度は, まず金ナノ粒子上におけるオリゴマーの担持量を種々の方法で見積もった. 具体的には熱重量測定, 元素分析およびUV-visを用いて, それぞれ0.016mmol/g, 0.018mmol/gおよび0.02mmol/gを得た. いずれの測定結果も良い一致を示した. 溶液中におけるジスルフィド6量体の100%二重ラセンのCDスペクトルを用いて, 金ナノ粒子上におけるオリゴマーの担持量を見積もったところ, 0.018mmol/gを得た. 他の方法から求めた担持量と同様の値であることから, 金ナノ粒子表面に結合した分子は100%二重ラセンを形成すると結論した. また, ナノ粒子を分散させる溶媒を置換することで二重ラセン-ランダムコイル間の可逆的な構造変化が起こることを見出した. テトラヒドロフラン中において100%二重ラセンを形成した状態で安定に存在するが, ブロモベンゼン中では二重ラセンの解離が60%進行した. この構造変化した金ナノ粒子を遠心分離によって集めてテトラヒドロフラン/トリフルオロメチルベンゼン/エタノール混合溶媒による洗浄の後に, テトラヒドロフラン中に分散させたところ, 二重ラセン形成反応が70%起こった. 熱に加えて溶媒という外部刺激に対しても応答する固体表面が得られたことになる. これは固体表面における合成二重ラセン分子の可逆的構造変化の初めての例である.
|