研究実績の概要 |
本研究では,当研究室で独自に開発した直鎖型四座ホスフィン meso-bis[(diphenylphosphinomethyl)phenylphosphino]methane (dpmppm) を用いて遷移金属多核錯体を合成し,得られた錯体の特異な反応性と物性について評価を行った。一つ目のテーマである「直鎖状Pd8核錯体」の研究では,アセトニトリルが配位したPd8核錯体 [Pd8(μ-dpmppm)4(CH3CN)2](BF4)4 のコールドイオン化 (CSI) 質量スペクトルからPd12核錯体やPd16核錯体に由来するピークが観測され,{Pd4(μ-dpmppm)}2+ ユニットがさらに連結する可能性が示された。この結果を含め学術誌 (Angew. Chem. Int. Ed., 2015, 54, 1016.) にて報告した。今後は,分子化学的ボトムアップの観点からより多くの Pd4 核フラグメントが一次元に連結するよう検討を行い,得られた超分子組織体に対し電子デバイスへの実現を志向した物性評価へと展開する。 さらに,「銅ヒドリド錯体」の研究では,理論計算から四座ホスフィン dpmppm によって架橋された Cu2(μ-H) への CO2 挿入反応のメカニズムについて詳細に考察を行い,これまでの実験結果とあわせて学術誌 (Chem. Asian J. 2014, 9, 3106.) にて発表した。
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