研究課題
特別研究員奨励費
本研究では,太平洋やインド洋で採取された深海底堆積物コア試料の地球化学的分析を行い,構築された大規模な化学組成データセットの多変量統計解析に基づいて,新規レアアース資源として有望視されている「レアアース泥」の生成機構を明らかにするとともに,こうした深海底における元素濃集と新生代のグローバル物質循環や環境変動の関連を解明することを目的とした.本年度は,前年度に引き続き深海底堆積物試料の全岩化学分析を実施し,累計3,512試料の分析が完了した.この大規模な化学組成データセットに対して独立成分分析による多変量統計解析を行った結果,太平洋とインド洋の深海底堆積物の化学組成を特徴づける独立成分として,レアアース濃集を示す成分,生物源炭酸カルシウム,生物源シリカ,火山性砕屑物成分,海底熱水活動起源成分などが抽出された.さらに,各試料の堆積年代とプレートテクトニクスに基づく大陸配置の復元結果,及び上記の独立成分分析結果を統合し,過去6,500万年の深海底堆積物を構成する主要素の時空間的変遷を描いた.これにより,赤道域では新生代を通じて生物生産性が高かったこと,従来同一に扱われてきた遠洋性粘土型のレアアース泥は大きく2つのタイプに分けられることなどが明らかとなった.独立成分の特徴,試料のオリジナルデータ (全岩化学組成) の特徴,海水から沈積するレアアースの質量収支などを詳細に検討した結果,レアアース泥の生成を支配する重要な因子は堆積速度であると結論づけられた.また,レアアース濃集独立成分の時間変化には新生代の気候変動の指標となる海洋深層の酸素同位体比の変動との関連が見られた.これは,プレートの移動や全球的環境変動が遠洋域の堆積速度に影響し,深海底における特異的なレアアースの濃集と密接に関連していることを示唆するものである.
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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巻: 印刷中
Journal of MMIJ
130005117335
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