本研究では、種々のリビング重合を可能とするドーマント種に複数の活性種を与える触媒を共存させ、可逆的に異なる活性種を生成させることで、活性種を相互に変換しながら1本のポリマー鎖を形成する、従来の活性種の枠を超えた新規なリビング重合系の開発を目的とした。本年度は、これまでに見出した相互変換型リビングカチオン/ラジカル重合系を確立するとともに、アニオン重合からラジカル重合への活性種変換についても検討した。 (1)炭素-硫黄結合をドーマント種とした相互変換型リビングカチオン/ラジカル重合系の開発 種々の反応条件下、イソブチルビニルエーテル(IBVE)とアクリル酸メチル(MA)の相互変換重合を検討した。適切な開始剤系を用いることで相互変換重合が進行し、1本のポリマー鎖中で活性種が変換した平均の回数は、ルイス酸やRAFT試薬の構造、反応条件によって異なり、例えばモノマーが100回付加する間に約3回から8回まで制御できることがわかった。また得られたポリマーは変換回数によって異なる熱物性を示すこともわかった。さらに、IBVEとメタクリル酸メチル(MMA)やアクリロニトリルとの組み合わせにおいても、反応条件を設計することで相互変換重合が可能であり、さまざまな組成や連鎖を有するカチオン重合性およびラジカル重合性モノマーのセグメントからなるマルチブロック共重合体を合成できることを明らかとした。 (2)炭素-ハロゲン結合をドーマント種としたリビングアニオン重合からリビングラジカル重合への活性種変換MMAの立体特異性リビングアニオン重合の生長末端をハロゲン化し、得られた炭素-ハロゲン結合からリビングラジカル重合を行うことによる活性種変換について検討した。ルイス塩基存在下、適切なハロゲン化物を用いることで定量的に末端のハロゲン化が可能であり、活性種変換によりさまざまなブロック共重合体やステレオブロックポリマーが合成できることを明らかとした。
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