研究概要 |
医薬品をはじめとする機能性物質の化学構造の多様化により、精密合成に対する依存度は一段と高くなっており、その一角を担う官能基選択的還元法の開発は、合成ルートの簡略化や選択肢拡大のために重要である。特に均一系触媒と異なり、再使用や生成物中への金属残留が少ない不均一系金属触媒による反応開発は、プロセス化学の観点からも重要である。窒化ホウ素担持型パラジウム触媒(Pd/BN)はこれまでの有機合成化学では困難であった様々な還元性官能共存下アジド、アルキンおよびアルケンを選択的に官能基変換できる。加えて弱塩基を添加することでアルキンをアルケンに変換する部分水素化にも適用可能であり、現在試薬として実用化される段階に到達している。 一方、水素の安定同位体である重水素(D)で標識された化合物(重水素標識体)は薬物動態研究、反応機構解明あるいは重水素標識医薬品(ヘビードラッグ)など幅広い分野で注目を集めており、官能基変換が容易なアルキンやアルケンに位置選択的に重水素を導入する手法の開発は標識前駆体の供給に直結する重要な研究課題である。この課題を克服すべく不均一系Pd/BN触媒を使用し、水素あるいは重水素によるアルキンの部分還元反応を利用することによって、効率的な重水素標識アルケン体合成法を確立した。 平成25年度は24年度から継続して、水素雰囲気下Pd/BNを触媒としたピリジン溶媒中における改良条件(H_2-Pd/BN-pyridine)を用いた。その結果、代表的な接触還元触媒であるPd/Cの使用では容易に還元が進行するアジド基などの還元性官能基存在下、アルキンからアルケンへの選択的な部分水素化反応を確立することに成功した(ChemCatChem. 203, 5, 2360-2366)。さらに当研究室で開発した他の不均一・系触媒と併せて含窒素(酸素)高分子担持型不均一系触媒と還元活性の関連性を示すことに成功し、その成果がperspecttveとしてCat. Sci. Technol誌に採択された。
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