研究課題
特別研究員奨励費
細胞膜表面には相分離による、飽和脂質やコレステロール(Chol)に富む膜ドメイン領域が存在すると考えられ、信号を外部から内部へ伝えるなど重要な機能を担うとされている。生体膜中のCholは、酸化ストレスを受け酸化コレステロールを生じる。一方、不飽和脂質Dioleoylphosphatidylcholine (DOPC)は、酸化ストレスを受け脂質酸化物であるOx1-DOPC、Ox2-DOPCや匂い物質であるNonanalなどを生じる。生体モデル膜において、蛍光観察中の活性酸素による脂質酸化によって相分離による膜ドメイン構造が出現することが報告されているが、脂質酸化物が膜の相分離構造に与える影響はよく調べられていない。そこで、本研究課題においてNonana1が膜の相分離構造に与える影響を調べることにした。飽和脂質Dipalmitoylphosphatidylcholine (DPPC)、不飽和脂質DOPC、Cholからなる3成分系の生体モデル膜系で相分離構造が観察されることが分かっている。Cholの一部を酸化コレステロールに置き換えると相分離構造の観察ができなくなる組成が存在する。そこへNonanalを膜へ添加したところ相分離構造が観察できた。さらに、膜の相分離ドメインの消失温度をそれぞれ比較した。結果、Nonana1を加えた場合には酸化コレステロール含有膜の相分離ドメインの消失温度が上昇し、Cho1含有膜では下降した。結果から、従来の疎水性相互作用に加え、親水性相互作用を考慮した膜の相分離構造を考察した。酸化生成物で有り匂い物質としての機能を持つNonana1が信号伝達に関わる膜相分離構造の状態を酸化物が含まない状態と同様の方向へ戻すような作用が観察され意義深い。
(抄録なし)
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