研究課題
特別研究員奨励費
1. 高温応答性ケニヨン細胞の応答温度の種間比較本年度は、「高温応答性ケニヨン細胞」がミツバチ科において保存されているか検証するため、ミツバチ科マルハナバチ属でゲノム情報が利用可能なセイヨウオオマルハナバチを用いて、kakuseiホモログを同定し、同様の高温曝露実験を行った。結果、ミツバチと異なり、kakuseiの発現量は38~40℃の間で上昇していた。このことから、キノコ体の高温選択的な応答性は、少なくともミツバチ科内では保存されていることがわかった。一方、セイヨウオオマルハナバチの高温応答性の閾値はミツバチ2種に比べて約6℃低かった。ミツバチとマルハナバチでは通常の生活温度(巣内温度)に約6℃の差がある。応答する閾値との相関を考えると、キノコ体の高温応答性細胞は、本来通常の生活温度から外れた高温時の温度制御に関わる可能性がある。2. 脊推動物と無脊椎動物に共通した初期応答遺伝子の同定kakuseiはミツバチ科昆虫にのみゲノム上に見出されるため、1.で明らかにしたキノコ体の高温応答性の進化的保存性を検証する際の指標としては不適当である。そこで、昆虫種を問わず広く利用可能な初期応答遺伝子の探索を試みた。ミツバチ脳にGABA(γ-アミノ酪酸)受容体の阻害剤Picrotoxinを投与することで神経活動を誘導したところ、脊椎動物で頻用される初期応答遺伝子の1つであるEgr-1のミツバチホモログ(AmEgrと命名)が発現上昇することを見出した。ゲノムデータベースを用いて他種におけるホモログを探索した結果、脊椎動物から線虫にまで広くホモログが見出され、汎用性の初期応答遺伝子として有望であると考えられた。これは脊椎動物と無脊椎動物で同じ遺伝子が神経興奮マーカーとして使用可能であることを示した初の知見であり(Ugajin et al. 2013)、関連学術領域に与えるインパクトは極めて大きいと考えられる。AmEgrの発現を指標にセイヨウミツバチのキノコ体における高温応答性を検証したところ、kakuseiを用いた際と同様に44~46℃の間で発現が上昇した。さらに、46℃曝露時のAmEgr発現細胞の分布パターンもkakusei発現細胞のものと類似しており、キノコ体の高温応答性を強く支持する結果であった。3. 哺乳類培養細胞を用いた高温応答性TRPチャネルの解析哺乳類培養細胞系を用いた解析では、ミツバチTRPチャネルは高温刺激に応答しなかった。近年、昆虫のTRPチャネルは哺乳類培養細胞では正常に機能しないとの報告もあり、ショウジョウバエS2細胞の利用を検討している。
(抄録なし)
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FEBS Letters
巻: 587 号: 19 ページ: 3224-3230
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International Journal of Molecular Sciences
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