研究課題
特別研究員奨励費
多細胞生物は、体内に侵入した病原性微生物を排除するために免疫システムを獲得してきた。このうち自然免疫系は、昆虫からほ乳類まで高度に保存されている。自然免疫系は感染防御の第一線として働き、多様な免疫応答を制御している。多様な免疫応答が協調して働くためには、細胞間で情報を伝達するサイトカインの存在が必要不可欠である。近年、自然免疫応答の制御メカニズムを解明する上で、単純な生理システムを有し、自然免疫システム系に依存しており、体液採取及び組織摘出が容易で生化学的解析に適するカイコ(Bombyx mori)をモデル動物として、自然免疫系の調節機構に関する研究を行っている。その中で昆虫サイトカインPPは自然免疫制御因子であり、細菌感染症に対する宿主抵抗性に重要な役割を果たすことを見出だしてきた。さらに、昆虫サイトカインPPの活性化に腸管が関与することを明らかとした。今年度の研究では、微生物の細胞壁成分によってカイコの腸管から誘導される新規PP活性化因子の同定と機能解析、及び誘導機構の解明を目指す。その目的において、腸管から産生される昆虫サイトカインPPの活性化因子の精製を行ってきた。これらを通じて、腸管において誘導される自然免疫活性化の個体における役割を初めて明らかにする目的である。本研究の遂行により、腸管が全身性免疫応答に関わるサイトカインの制御に寄与するという新しい概念を提示し、さらにその詳しい分子メカニズムにまで迫ることが出来ると期待される。さらに、自然免疫システムは生物間に保存されているにも関わらず、昆虫においてサイトカインネットワークに関する研究例は未だない。本研究は、自然免疫系だけを有する昆虫においてもサイトカインネットワークの存在を初めて示唆するものであり、サイトカインネットワークが免疫応答の重要な反応で、種間を超えて保存されている重要な複雑系として成り立っていることを明らかに出来ると期待される。
3: やや遅れている
カイコ腸管から産生される昆虫サイトカインparalytic peptide活性化因子の精製をテーマにしているが、カイコ2万匹からの精製を行ったが活性はあるが物質を検出することが出来なかったため、精製出来ているか否かの判断が出来ず、精製を終わらせることができなかった。
カイコ腸管から精製することは難しいと判断した。そのため、今後はカイコ由来培養細胞に刺激を加えることで、昆虫サイトカインPPの活性化が引き起こされるか、などを検証し、大量に採れる系を確立していこうと考えている。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
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