研究概要 |
本研究では衣服の工学的設計に必要な布の力学特性の制御方法の解明を目的として、芯地による布の剛性変化が衣服のシルエットと着心地に及ぼす影響を調べた。芯地の異なる4種類のジャケットを製作し, 衣服のシルエットと着心地の違いを官能検査により調べ、さらに布の物性値との関連性を調べた。 芯地の異なるジャケットのシルエットの外観評価を官能検査で行った。官能検査では専門家らにより行われる評価項目を利用した。また, ジャケットの形状を三次元計測し, 特徴量を抽出し, 官能検査結果と比較した。三次元計測と官能検査の結果から、接着した芯地の違いにより、ジャケットの表面の凹凸と腰部のシルエットが変わることが明らかになった。ジャケットの三次元データから表面の凹凸度と腰のシルエットの違い評価する特徴量を提案した。その特徴量とジャケット外観の官能評価結果を比較した結果, 両者は良く一致し、三次元計測によるシルエット評価の可能性を示した。 さらに、芯地による布の剛性変化がジャケットの着心地に及ぼす影響について調べた。剛性が異なる芯地を用いて製作した同じパターンのジャケット4種を実験に用いた。各種動作時の着心地を官能検査で評価した。官能検査の結果、芯地の接着はジャケットの固さ、動きやすさ、圧迫感、着心地に影響することが明らかになった。柔らかいジャケットほど着心地良く、動きやすく、圧迫感がないと評価された。また、動作時の衣服の画像を撮影し衣服の変形と着心地の関係を分析した, 画像分析の結果、着心地に大きく影響するジャケットの部位とその理由を検討した。芯地の剛性が大きいと動作時に生地が変形できず、張力が増加し, それに伴い, 圧力が増える. 特に, 後ろ脇、胸、背中、前腕、後ろ腕、脇下に強い圧力がかかり、圧迫感、動きやすさ、着心地に影響していることが明らかになった。この結果は見た目と着心地を両方考慮するジャケット製作に役に立つと考えられる。
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