研究概要 |
昨年度, 我々は足底知覚学習課題が高齢者の歩行中の姿勢バランスの安定化に与える効果について, ランダム化比較対照試験を用いて調査した. 本年度は, その順序効果を明らかにするために, ランダム化クロスオーバーデザインを用いて調査した. 対象は, デイサービスを利用している高齢者とした. 被験者はランダムにA群とB群に割り付けされ, 2つの異なる課題を異なる順序で実施した. A群は, 最初に知覚学習課題を実施し, その後にコントロール課題を実施した. B群は, 最初にコントロール課題を実施し, その後に知覚学習課題を実施した. なお, 最初の課題を実施して約1ヶ月経過した後に, もう一方の課題を実施した. 知覚学習課題では, 被験者は硬度の異なる5段階のスポンジを足底で弁別する課題を実施した. コントロール課題では, 硬度の弁別は求めずに同様の課題を同回数実施した. これらの課題は計10日間実施し, 介入前後における歩行中の体幹加速度を計測した. 歩行中の体幹加速度は, 無線型3軸加速度計を用いて計測した. 加速度計の装着部位は, 第3腰椎棘突起部とした. 加速度計より得られたデータから側方・垂直・前後成分のRoot Mean Square (RMS)を算出した. 結果, 知覚学習課題を実施した期間では歩行中のRMSの減少を認めた. 一方, コントロール課題を実施した期間ではRMSの減少は認めなかった. 本研究結果より, 足底知覚学習課題は高齢者の歩行中の姿勢バランスの安定化に効果的であることが示唆された.
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