研究実績の概要 |
本年度は, これまでの進めてきた研究の成果をとりまとめて報告すると同時に, 今後のさらなる研究の土台となる研究テーマにも着手した. 具体的には, まず温暖化問題に関するリスク認識の異質性についての研究成果をSURED (アスコーナ, スイス), WCERE (イスタンブール, トルコ), APET (シアトル, アメリカ)で報告し, 国際誌に投稿した. この研究は, 科学的な不確実性が存在する状況で, 新たな情報が得られた場合に公共財供給にどのような影響を及ぼすのかを検討したものである. 論文の中では, 一見して有用に思われる情報がパレート改悪をもたらすケースがあることや, 場合によっては情報にノイズを加えることによって効率性を高めることが可能になることを示した. また, 地球温暖化と薄暮化との相互作用についての研究が, Climatic Changeに掲載された. この論文では, とくに温暖化の健康被害について詳細なモデル化を行うことで, グローバルな環境問題とローカルな環境問題とがどのように影響を及ぼし合うのかを明らかにした. さらに, 先進国と途上国との温暖化への適応能力の違いに着目した研究を, Adaptation for mitigationとしてワーキングペーパーにまとめ発表した. 既存の研究ではAdaptationとMitigationとが代替的となるのが一般的であるが, 本論文では温暖化の人的資本への影響を考慮することで, 動学的な補完関係が生じ, その結果として先進国が途上国の適応策を支援することでパレート改善を実現できることを示した.
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