研究課題
特別研究員奨励費
平成25年度は、前年度に作製した実験材料を用いての実験と死刑制度に関する実験や調査を行った。本研究の目的は、法の素人の量刑判断の実験的検証であり、その目的上、実験材料には実際の刑事裁判と内容も流れも近い判断材料を参加者に見せ、その量刑判断を求める必要がある。そこで前年度は、専門家の意見もふまえ、本格的な裁判ビデオを作製した。本年度はそのビデオを使用することで、実際の裁判にかなり近似した条件下における素人の量刑判断を明らかにすることができた。具体的には、量刑判断をするときの基本となる応報的動機(犯罪の重大性に応じて量刑の重さを決めようとする心理)は、未就学児でも抱いているようなより素朴理論的「悪と報い」という心理学的対応関係性に基づいている可能性があるということであった。さらに本年度は、先述の裁判ビデオを用い、量刑判断の中でも究極の刑罰である死刑について、素人の判断と制度そのものに対する考え方を検証した。その結果わかったことの1つ目は、裁判官3名と裁判員6名によって構成される評議体において、他者の判断が死刑判断に影響するということであった。実際の死刑判断は多数決によって決まるが、本研究から、死刑反対が多数派の場合には死刑判断には何ら影響しないが、死刑賛成が多数派の場合には死刑判断が促進されやすいという非対称的な結果を得た。さらに興味深いことに、後者(死刑賛成が多数派)の場合であっても、死刑賛成がやや多数の場合(評議体9名中、参加者当人を除く8人中5人)は死刑判断が促進されるが、圧倒的多数の場合(8人中8人)には死刑判断がむしろ抑制されることが示された。さらに、25年度は、インターネット調査を2回行い、死刑制度そのものに対する素人の考え方について検証した。その結果、2回の調査に共通して、死刑制度に賛成する割合は70%以上とかなり高く、賛成する理由としては「応報」と「一般予防(刑罰によって社会全体における犯罪抑止を期待しようという考え方)」の2つが挙げられやすいことが示された。
(抄録なし)
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社会心理学研究
巻: 30(印刷中)
110009851556
法と心理
巻: 13 ページ: 98-103
応用心理学研究
巻: 38 ページ: 145-146