研究課題
特別研究員奨励費
弾性線維の劣化は肺気腫等の老化関連疾患の原因と考えられているが、その維持機構については不明な点が多い。胎生期の弾性線維形成に必須であるDANCEは、成体期にも高いレベルで発現し加齢に伴い組織のDANCEの活性が低下していることから、成体期における弾性線維の維持に関わっていることが推測されていたが、従来のDANCEノックアウトマウスでは胎児期の弾性線維形成に異常があるために検証は困難であった。そこで申請者はCreERT2システムを利用して弾性線維形成の終了した成体期にDANCEの発現を抑制し、実際に弾性線維の劣化が進むかどうかを検証する計画を立てた。平成25年度は、DANCEの遺伝子座にCreERT2をノックインしたマウス(ノックインマウス)の作成と、DANCE遺伝子の一部をloxPではさんだ(flox)マウスの評価を計画した。ノックインマウスについては、生体でのCreERT2の蛋白の発現効率を上げるために、ほ乳類のコドン使用頻度に応じてCre遺伝子配列を設計(最適化)し、クローニングした。そしてターゲティングベクターをBACの大腸菌内組換え(recombineering)技術を用いて作成し、複数のES細胞を樹立し、良好なキメラマウスを複数得られたが、F1を得られなかったので再度ES株を作成している。DANCE floxマウスはノックインマウスと同様の手段でES株を作成し、キメラマウスからFlマウスを得た。F1マウスはまず全身でCreリコンビナーゼを発現するマウスと交配し、ノックアウトマウスと同様の表現型を呈することを確認した。同時に、フリッペースマウス(生殖系列でFRTを発現するマウス)と交配してNeoカセットが除去されたマウスを得た。今後ノックインマウスを得られたら交配する予定である。
3: やや遅れている
平成25年度は2系統の遺伝子改変マウスを作成とその評価を行う研究計画をとっていた。DANCE-floxマウスでは予定通りF1マウスを確保、組み替えによるDANCEの発現の停止を確認しpgk-Neoカセットの除去まで進捗したが、DANCE-CreERT2ノックインマウスの作成において、当初得られたES細胞株よりキメラマウスを確保したもののFlマウスを得られなかったため、新しいES株の樹立が必要になったことから、計画全体の達成度が計画よりやや遅れていることは否めない。
DANCE-CreERT2ノックインマウスのES株からキメラマウスを確保し、野生型マウスと交配してF1マウスを確保する。その上で、FRT配列ではさんだpgk-Neoカセットを、生殖系列でFRTを発現するマウスと掛け合わせることにより除去する。DANCE-CreERT2ノックインマウスとインディケーターマウスを交配し、CreERT2の発現部位がDANCEの発現部位と一致するかを確認する。更に、DANCE-CreERT2ノックインマウスとDANCEfloxマウスを交配し、成体期に誘導薬剤であるタモキシフェンを投与することで、DANCEの発現を停止させ、弾性線維の劣化の状態を弾性線維が重要な働きをしている臓器(皮膚・大動脈・肺)で評価する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
PLoS One
巻: 8 号: 8 ページ: e73554-e73554
10.1371/journal.pone.0073554
巻: 9 号: 2 ページ: 25-25
10.1371/journal.pone.0089135