研究概要 |
重度の免疫不全マウスにヒト造血幹細胞(HSC)およびヒトサイトカイン遺伝子を組み込んだヒト間葉系幹細胞(MSC)を移入することで、ヒト生体に近い免疫環境を再構築し、ヒト用ペプチドワクチンの臨床試験代替系として確立することを目的に実施した。 まずヒトcDNAから造血系サイトカインであるSCF,FL遺伝子および骨髄系細胞や樹状細胞の分化に必要なIL-3,IL-4,GM-CSF遺伝子をクローニングした。そして、レシピエントマウス骨髄内にヒト造血微小環境を構築するため、クローニングしたヒトサイトカイン遺伝子をレンチウイルスベクターに組み込み、MSCへ遺伝子導入した。導入後、ヒトサイトカインの発現をELISAにより確認した。 生後48時間以内の新生仔NOD/SCID/γcnu11(NSG)miceにガンマー線(1グレイ)を照射後、ヒト臍帯血からautoMACSを用いて純化したヒトCD34+HSCとヒトサイトカイン遺伝子を導入したMSCを静脈内投与した。移入後10週目に採血しヒト免疫細胞の分化マーカー(CD4, CD8, CD11c, CDI4, CD19, CD45)をフローサイトメーターで解析し、キメリズム(ヒト細胞への置換の割合)を確認した。その結果、ヒトサイトカイン遺伝子導入MSC投与群は、HSCのみの投与群と比べてヒト免疫細胞のキメリズムに違いは見られなかった。そこでMSCを移植したマウスを調べた結果、MSCの生着が確認できず、このためキメリズムが変わらなかったと考えられる。今後もMSCの移植実験を継続して生着率を向上させる方法を模索し、かつヒトT,B細胞が十分に機能するヒト化マウスの開発を行っていく。
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