低侵襲な診断治療技術は、患者の身体的・経済的負担を軽減し、医療費削減や在宅医療推進など、社会的な課題に直結する要素である。なかでもカプセル内視鏡に代表される小型のエレクトロニクス機器をインプラントとして、利用することは医療に画期的な進歩をもたらすと期待される。体内に入れたインプラントの位置を知ることが必要であるが、如何に簡便に行えるかが鍵となる。いわゆる金属探知機も、交流磁界の渦電流損失による磁界強度の減少を動作原理とするが、本研究では位置に加え、姿勢をも同定することを目指した。具体的には、励磁・検出コイルを走査し、検出信号のプロファイルを解析することによりインプラントの位置と方向の情報を生成することである。 これまでには構造物の探傷を主に行ってきたが、本研究では微小な金属や電気電子部品をサンプルとして、励磁周波数の最適化、検出信号のサンプル・検出コイル距離(リフトオフ)の依存等を評価する。インプラントの存在自体は検出可能であることは言うまでもないが、如何にリフトオフを保てるか(遠くから操作できるか)、体内の深さ方向の位置、及び検出コイルを走査させて、その姿勢を同定できるかを明らかにした。 高感度ロックインアンプを搭載した励磁・磁界検出装置を使用した。この装置の信号処理系において、既にSN比向上のための自作演算ユニットを設計・開発しているので、これを併用した。励磁・検出装置と信号処理系から構成される本システムにより通常、渦電流探傷では困難と考えられている金属内部の欠陥検出が可能になった。以上の研究、及び得られた成果から本研究で開発したシステムにより体内のインプラント位置・姿勢の同定への応用が期待されることを示した。
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