研究概要 |
本研究では,義手用ロボットハンドを設計するためのタスクベースな手法を提案している.提案手法では,タスクは作業座標空間で運動学と静力学で定義される.設計されるロボットハンドのメカニズムは,3つの要素から構成される.それらは,多関節機構(ハンド部分)と線形従属機構とアクチュエータである.ここで,線形従属機構とは,アクチュエータと多関節機構の各関節を接続し,アクチュエータの変位の線形和を各関節に伝達する機構であるとする.その線形関係は,達成させたいタスクに合わせて適切に与える必要があり,本提案手法では主成分分析を用いて運動を低次元化して与える.線形従属機構を用いることにより,少数のアクチュエータで多数の関節を駆動する劣駆動メカニズムを実現できる.また,多関節機構の各関節と線形従属機構は,弾性要素を介して接続されている.本年度は,本提案手法を用いて3次元のロボットハンドを設計し,シミュレーションを用いて有効性を示した. それから,人間の手の運動を計測し解析をする実験も行った.実験の対象としては,ピンチング(精密把握)やハードグリップ(握力把握)などの日常生活に必要な手の動作を複数選んだ.実験では,三次元動作解析装置(モーションキャプチャ)と小型の力覚センサを併用し,指の関節角度と指が対象物に与える力を同時に計測した.骨格モデルを用いて,計測された値から各指の関節角度と関節トルクを推定した.それらの時系列データを低次元化し,近似的に少数の変数で復元できることを確かめた.この結果は,本研究で提案しているロボットハンドの設計方法を用いると,少数のアクチュエータで日常生活に必要なタスクを代行できるロボットハンドを設計できることを示唆している.
|