研究概要 |
14-3-3蛋白質ゼータ(14-3-3ζ)は、ミトコンドリア膜輸入促進因子(MSF)と呼ばれ、ミトコンドリア外膜複合体(TOM)群に、生合成されたミトコンドリア蛋白質を引き渡す役割を演じる。ここでのMSFの機能は、新生蛋白質の正確な選別機能でありプロテインターゲッティングを行うペプチド認識機構である。本研究では、このMSFの立体構造が膜側受容体であるTOM20とどのように相互作用するのかを、結晶構造解析を行うことにより構造生物学的に研究することを目的とした。 ラット肝臓MSFスモールサブユニットを発現する形質転換大腸菌約40gからMSF精製試料を約20mg得ることができた。結晶化条件は、緩衝液20mMTris-HCL,pH7.5,0.2M NaCl,蛋白質濃度15mg/ml、沈殿剤PEG3350、25℃で針状結晶を得ることができた。第3世代放射光であるアンジュレータ光を用いたESRFおよびSPring-8での回折実験の結果、結晶学的データは、a=b=73.16,c=113.56Å,P6122,Z=12であった。MSF(あるいは14-3-3蛋白)はシグナルペプチドの認識(リン酸化部位との結合)において2量体を形成することが提唱されていたが、この構造でもC末端を切断しつつ、しかし2量体形成を維持していることが示された。これはシグナルペプチド認識という機能を損なった場合でも、MSFが細胞内で存在する要因、あるいはMSFが持つ本質的な4次構造構築のシステムであると考えられる。2量体は、N末端から点在する正あるいは負電荷を帯びたアミノ酸領域がお互いを相補するように向かい合って形成されている。
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