研究概要 |
平成13年度の研究実績は以下の通りである. 酵母YUHlとUbの相互作用の系については,35kDaの共有結合複合体試料について大まかな高次構造を決定するために,選択的プロトン標識試料を作成し解析を行った.IleのHD1#,LeuのHD#,ValのHG#の標識にはKayらによって提案された方法を用いた.高分子量蛋白質の大まかな構造の決定には,メチルプロトンの他に芳香族アミノ酸の側鎖プロトンからの距離情報が重要であることが知られている.今回は新たな試みとして,Phe,Tyr,Trpの共通の前駆体であるシキミ酸を用いた結果,α位β位(Trpの場合はさらに側鎖5員環)を重水素化しつつ,側鎖6員環部のみプロトン標識することに成功した.現在YUHl-Ub複合体について選択的プロトン標識試料から得られる少数のNOE情報と残余双極子カップリング情報を用いた効率的な構造解析法の確立を進めている. NMRを用いた蛋白質異種複合体の高次構造解析の際には,一方を安定同位体標識し,^<13>C/^<15>N選択/除去フィルターを組み込んだ測定を行うことで,分子内/分子間の距離情報の選別を行うのが普通である.今回は^<13>C/^<15>N標識された1種類の蛋白質複合体試料を用い,「それぞれの蛋白質の単体での高次構造と結合インターフェイスの情報から効率よく分子内/分子間の距離情報の選別を行い,半自動的に高次構造解析を行うシステム」の構築を試みた.テスト試料として用いた110残基と84残基の複合体試料の場合,まったく分子間NOEの帰属がない状態からスタートして,主鎖RMSDが0.7Å程度まで構造を収束させることに成功した.現在他の複合体の系において,このシステムの効率と安全性の検証を行っている.
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