研究概要 |
現在、エイズウイルス遺伝子を標的としたアンチセンス法はある種の限界に到達しており、飛躍的を新しいアイディアの出現が待たれているのが現状である。そこで、本研究では全く新しいアンチセンス核酸であるボラノホスフェートDNAに着目した。ボラノホスフェートDNAは天然型DNAの非架橋酸素原子の一つをボランで置換した構造を持ち、酸や塩基に対して極めて安定である。また、天然型DMより脂溶性が高く、細胞膜透過性に優れ、ヌクレアーゼによる分解に耐性を示す。さらに、ボラノホスフェートDNAは、相補的な塩基配列を持つRNAとが形成する二重鎖がRNase Hの基質となることなどから、アンチセンス核酸として有望である。しかし、副反応などの問題から、これまでにA, G, C, T4種類の核酸塩基を有するオリゴヌクレオチドボラノホスフェートの合成例は無い。このような状況から、ボラノホスフェートDNAの新規合成法を確立することを目標として研究を開始した。 従来のボラノホスフェートDNA合成法は、ホスホロアミダイト法やH-ホスホネート法を用いて3価のオリゴヌクレオチド鎖を構築し、合成の最後のステップでインターヌクレオチドのボラノ化を行うために、核酸塩基部がボラノ化試薬と反応してしまう。従って、この副反応の比較的起こりにくいチミジル酸誘導体のみが合成されている。申請者は、あらかじめリン原子にボランが導入された新規ボラノホスホリル化剤を開発し、これを用いてヌクレオシドをボラノホスホリル化することにより、従来法における核酸塩基に対するボラノ化剤の副反応の問題を本質的に解決した。本年度は新規合成法における核酸塩基の保護基の選択、縮合反応系の開発を行い、4種類の2量体TT, CT, GT, ATの合成に世界ではじめて成功した。現在,この方法の固相合成への応用を検討しており,今後HIV-nef mRNAに対するボラノホスフェート型アンチセンス核酸の合成を行い,実際のアンチセンス効果を評価する予定である。
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