研究概要 |
1)HDCノックアウトマウスの肥満細胞の観察 ヒスタミンの合成酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素の遺伝子ノックアウトマウスの肥満細胞は,電子顕微鏡で観察すると,顆粒内容物が疎であり,プロテアーゼが減少している事が判明した.その後,ベルベリンという色素で顆粒を染色してみると,染色が弱く,陽性に染色された細胞も少なかった.現在,ヘパリン量の測定を開始しているところである.分化のどの段階で,顆粒に影響を受けたか検討している. 2)肥満細胞のFACSによる解析 まず,腹腔内の肥満細胞の表面抗体であるFcε受容体と,c-kit受容体を使い分けてみたが,ノックアウトもワイルドタイプも,腹腔細胞の中では,数がすくなくはっきりとした結果が得られなかった.現在,SV40 Large T antigenの遺伝子が入ったノックアウトおよびヘテロ由来の肥満細胞株を樹立できているため,この細胞をマウスの生体内で分化させ,顆粒と表面抗体の変化をみようと考えている. 3)HDC遺伝子導入によるレスキュー実験 食事中のヒスタミン量を増加させることによって,肥満細胞へのヒスタミンの取り込みが増大することがわかったものの,電顕で見た顆粒像はあまり変化がなかった.HDC遺伝子を再度導入するべく,HDC遺伝子のトランスジェニックマウスとノックアウトマウスとのstrainを合わせるようにバッククロスを行っている.現在6世代まで来ている.また,先ほどの樹立した肥満細胞にHDC遺伝子を再度発現させ,細胞を分化させるとどうなるか検討しているところである. 3)野生型マウスからの骨髄移植実験 ノックアウトマウスで観察された肥満細胞の表現型が野生型の骨髄をノックアウトマウスに移植することによって,もとの戻るかを確認しようと,骨髄移植実験を行ったが,もとに戻ることは確認できなかった.
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